生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック(『仮面ライダーV3』第27話)

あらすじ

ライダー隊員の正太郎少年から、精進湖の洞穴でショッカーの怪人を発見したとの通報が本部にもたらされた。怪人は棺の中に安置された死体に見えたが、志郎が精進湖へ急行する間に、4体のショッカー怪人は一斉に復活。志郎が到着したときには見張っていた正太郎の父親を襲って姿を消していた。

落盤が起こった洞窟から脱出した志郎達を、デストロンの怪人・ワナゲクワガタが襲う。志郎はワナゲクワガタの輪に捕らわれ湖に落ちたフリをしてV3に変身。いったんはこれを退け、逃走するワナゲクワガタをホッパーで追跡すると、たどり着いたのは郊外の廃屋だった。

慎重にワナゲクワガタの姿を探すV3を突如襲ったのは、2体のショッカー怪人、イモリゲスとシオマネキングだった。廃屋でのショッカー怪人との2vs1の戦い。そしてアジトでは、その戦いの様子をモニターで眺めている5人の姿が。1人はドクトル・ゲー、あとの4人は、ショッカーおよびゲルショッカーの大幹部達、ゾル大佐、死神博士、地獄大使、ブラック将軍であった。

デストロンは、科学陣が開発した新型毒ガス「ギラードガンマ」を全国でばら撒く「日本全滅作戦」を企図。そのために、各地での作戦を指揮する要員として、過去の組織の大幹部達を復活させたのだった。作戦はドクトル・ゲーが担当する東京地区を皮切りに即日決行された。

都内各地でギラードガンマがばら撒かれ、次々と犠牲者が出る中、志郎は人々が倒れる街中でワナゲクワガタに不意打ちされ、捕らわれてしまう。

アジトで各地区での作戦遂行を打ち合わせる5大幹部。そこに、ワナゲクワガタが志郎を捕らえたと、担架に乗せた志郎を連れてくる。しかし、タンカにかぶせられた布を取ってみると、そこにあったのは戦闘員の死体。

驚く5大幹部を尻目に、別の戦闘員に化けて潜入していた志郎が、ギラードガンマの解毒剤を掠め取り正体を明かす。しかし、アジトから脱出しようとする志郎を、ワナゲクワガタとショッカー怪人達が阻む。V3に変身して相対するも、多勢に無勢。

5大幹部と5怪人に取り囲まれ、V3絶体絶命!

解説

なんと、ショッカーとゲルショッカーの幹部達が復活して、ドクトル・ゲーと共演するという意表過ぎる展開。後々のシリーズ作品では、過去の仮面ライダー達が客演して、当代の主役ライダーをサポートするいう展開は多用されていますが、悪の組織の大幹部でも同じ事が行われていたんですね。もちろん、全員オリジナルキャストです。ただ、過去の大幹部の客演はこれ1回きり。後のシリーズで過去の大幹部が登場することはありません(「RX」のシャドームーンは除外します。あれは主役ライダー自体が同一人物なのでストーリー的な必然がある)。そういう意味でも、5大幹部勢揃いのシーンは、貴重すぎるカットです。

とまあ、番組的にはアツい展開なのは間違いないのですが、冷静にデストロンの組織構成という点で評価してみると、デストロンという組織の根本的な人材不足と脆弱性という問題点が浮き彫りになっているとも言えます。

ドクトル・ゲーはデストロン日本支部の初代大幹部ですが、実はデストロン生え抜きの大幹部は彼が最初で最後だったりします。その後に出てくるキバ男爵、ツバサ大僧正、ヨロイ元帥といった大幹部達はいわゆる「結託部族」と呼ばれ、デストロンと結託した邪悪部族出身の大幹部。つまり、ドクトル・ゲーの死後、デストロンは単独で組織を維持できないような状態だったということです。そんな脆弱な組織だから、各地で一斉に展開する虐殺作戦を遂行するための指揮要員を自前で調達できず、過去の大幹部を甦らせざるを得なかったとも言えます。

やはりデストロンは、ゲルショッカー崩壊後に急ごしらえで組織したためか、改造人間達の性能は良くても、組織としては色々と準備不足は否めないようです。

さて、各幹部と担当地区は、東京がドクトル・ゲー、北海道がゾル大佐、九州を地獄大使、大阪地区が死神博士、中国地方がブラック将軍という割り当て。東北や中部、四国が抜けてますが、まあこれは後々ということでしょうか…

で、さっそく東京から開始される作戦。「どんな防毒マスクでも防げない」と首領が豪語するギラードガンマですが、散布する戦闘員、思いっきり防毒マスクつけてますけど?

ちなみに、復活したショッカーの怪人達は、ドクダリアン、シオマネキング、ウニドグマ、イモリゲスですね。これも復活した幹部達それぞれの配下の怪人になっている…というわけではないですね。そもそもゲルショッカーの怪人がいない。ちなみにドクダリアンがゾル大佐配下の怪人で、他の3体はすべて地獄大使配下の怪人ですね。

脚本:伊上勝
監督:山田稔

第26話「怪人ヒーターゼミのミイラ作戦!!」第28話「5大幹部の総攻撃!!
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