人か野獣か?!密林から来た凄い奴!(『仮面ライダーアマゾン』第1話)

あらすじ

アマゾンの奥地でひっそりと生きる古代インカ帝国流れを汲む一族。強大なインカ科学の鍵となるギギの腕輪をめぐり、十面鬼が反乱を起こした。ギギの腕輪を持つ長老バゴーはインカの秘宝を守るため、アマゾンの密林で育った野生児・山本大介に改造人間手術を施し、ギギの腕輪を移植した。バゴーは手術を終えると、「日本へ行け!高坂に会うんだ!」という催眠暗示を彼に残して絶命した。

インカ一族の制圧を完了した十面鬼率いるゲドンは、次なる標的を日本に定め、侵攻を開始。既に、多数の人間が謎の失踪を遂げるという形で、徐々に東京に侵食を開始していた。

一方、大介は暗示に導かれ、貨物船に密航して日本に到着したが、港に降り立つ早々、ゲドンの刺客・クモ獣人に襲われる。クモ獣人ともみ合う中、一人の日本人男性と向き合った大介。男性は、大介とインカの「味方のサイン」をかわし合う。彼は高坂太郎。かつてアマゾンでバゴーに出会い、ゲドンの存在を知る唯一の日本人で、アマゾンで遭難した大介の父親の知り合いでもあった。

大介は高坂を守るようにクモ獣人と相対するが、高坂はクモ獣人の手により頭部に怪我を負わされ、入院を余儀なくされる。知らせを聞いて駆けつけた姪のりつ子と甥のまさひこ姉弟に、アマゾンから来た男と、敵の存在をほのめかす高坂。

まさひこは窓の外に見かけた不審な人影を追って、外に出る。倉庫の中で、まさひこは大介と遭遇。まさひこが「味方のサイン」を示すと、大介も笑みを浮かべて同じサインを返した。言葉のわからない大介に、まさひこは自分の名前を教え、また自分の名前も知らない大介に「アマゾン」という仮の名前を与えた。

二人が友情をかわしたところを、クモ獣人が襲撃する。まさひこを守りながら全身血まみれとなってクモ獣人と格闘するアマゾン。アマゾンの怒りと闘気が最高潮に達して絶叫した瞬間、彼は異形の怪人に変化していた。まさひこが声を上げる。「アマゾンライダー!」

クモ獣人を退けたアマゾンを高坂の元に連れ帰るまさひこ。だが、既にクモ獣人は高坂の病室を襲撃。アマゾンは間一髪間に合わず、高坂は目の前でクモ獣人の犠牲となってしまった。さらにりつ子とまさひこを襲うクモ獣人の前に立ちはだかるアマゾン。怪人態に変身したアマゾンは壮絶な戦いの末にクモ獣人に致命傷を負わせる。クモ獣人はアジトに逃げ帰るも、十面鬼の逆鱗に触れ、処刑された。

自分のことを知る唯一の存在だった高坂を失ったアマゾン。何故襲われるのか、敵の正体は何なのか、言葉も通じず他人との意思疎通もままならない東京で、野生児アマゾンの孤独な戦いが始まった。

解説

罪深き長老・バゴー

シリーズ第4作、「仮面ライダーアマゾン」開幕です。

冒頭では、主題歌に先立って作品の背景描写が行われます。十面鬼が反乱を起こし、バゴーが大介を改造する経緯を一通り描写した後で、ようやく主題歌です。バゴーは大介に対して何ら説明を行わず、ただ「日本へ行って高坂に会え」という暗示のみを与えて息を引き取ります。人の身体を改造までしておいてなんとも無責任な話ではあります。結局、その高坂から詳しい情報を得る前に高坂はゲドンに殺され、大介は何も解らぬまま東京ジャングルに一人放り出されることになったのですから、バゴーは実に罪深い。

ちなみに、このバゴーを演じているのは明石潮という俳優です。失礼ながら、私にはあまり馴染みの無いお名前だったのですが、調べてみると、昭和初期、戦前から活躍しているかなりのビッグネームと言ってよい方だったようです。その経歴を見るに、子供番組の、しかも冒頭だけに登場するチョイ役に使えるような俳優にはとても見えなかったのですが…本来の意味での「役不足」感が半端ないです。

そういえば、前作「仮面ライダーX」で、神啓太郎役で第1話と第2話のみに出演した田崎潤も実はかなりの大物俳優だったらしいのですが…。そういう大物をチョイ役で使えるようなつてでもあったんでしょうか。それとも、予算が無いからこそチョイ役でしか使えなかったのか…。いずれにせよ、もったいない話ですよ。

天才子役・松田洋治

大物と言えば、まさひこ役の松田洋治。当時こそまだ無名の子役でしたが、アニメ映画「もののけ姫」でアシタカの声をあてた俳優と言えば、「ああ!」と思い出す人も多いのではないでしょうか。後の大物の片鱗は既にこの頃から見えていて、演技がとても自然で芝居臭さが全く無い。これまでの歴代作の子役と比較してもその差は歴然としています。主演の岡崎徹は松田を「天才的」と評しており、自分の未熟さを痛感させられたと語っているくらいで、まさに恐るべき天才子役だったわけです。

怪奇アクション

今回のライダーの敵役となる、秘密結社ゲドンの首領・十面鬼。なんとも不気味で異様な風体は、怪奇アクションとしての原点回帰を意識したのでしょう。下半身である人面岩に埋まっている9つの顔は、大野剣友会の面々が演じているのですが、人面岩の内部は狭い上に中腰で立たねばならず、腰に負担がかかって苦労したとかなんとか。

本作では野生児ライダーという設定から、初期ではとにかく野趣溢れる戦いぶりが展開されます。今回も、アマゾンはクモ獣人に噛み付いては足を次々と食いちぎり、腕のカッターで切り裂いたクモ獣人の傷口からはオレンジ色の血がダラダラ流れ出すなど、微グロとも言えるような異様なアクションが展開されます。

まあ、これも視聴率の低迷でそのうち従来のスマートな格闘スタイルへと回帰してゆくのですが…本作初期の異様なアクションは、今となっては唯一無二で、一見の価値ありと言えましょう。

脚本:大門勲
監督:塚田正煕

第2話「十面鬼!神か?悪魔か?」

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