子連れV3 死のスカイダイビング!(『仮面ライダーV3』第38話)

あらすじ

山中の送電設備の鉄塔で保線作業をしていた保線員二名が、行方不明になった翌日に白骨死体で発見された。デストロンの関与を疑った志郎は、現場へ向かう道中、一人の男の子・ツヨシと出会う。父親と二人で、出産帰省している母親の元へ向かっていたのだが、父親が沢へ水を汲みに行ったまま戻らないという。志郎はツヨシと二人で父親の姿を探すが、そこをツバサ軍団第三の戦士・殺人ドクガーラに襲撃される。変身するいとまもなく、志郎はドクガーラによって空高く持ち上げられ、上空からたたき落とされてしまう。

志郎を殺したと意気揚々のドクガーラ。しかし、志郎は怪我を負いつつも生きていた。ドクガーラは捕らえていたツヨシの父親に化けて、再び志郎達を騙して崖下にトラックごと転落させようとするが、これも寸前で志郎が踏みとどまって失敗する。

志郎はツヨシを連れたままでは危険だと判断し、本部に詰めていた純子を呼び出すが、その純子も志郎に合流する前にデストロンの手に落ちた。やむなくツヨシを待たせて純子と父親の捜索に向かう志郎を、三度ドクガーラが襲撃。万を持してV3に変身した志郎は、そのままアジトへと踏み込んで父親と純子を救出する。

アジトの外へと戦場を移すと、ドクガーラともみ合うツヨシを助け出し、自らの背中に背負ってドクガーラと対峙するV3。最初の大戦と同様に、ツヨシ共々上空高く持ち上げた上で落下させられるが、V3はハリケーンを呼び出すことで墜落の危機を回避。そのまま空中でハリケーンを操作してドクガーラを跳ね殺した。

ツヨシと父親は無事に再会し、二人揃って新しい家族と対面を果たすことができた。志郎と純子は幸せな一家と笑顔で別れ、本部へと戻っていくのであった。

解説

ここのところ、ツッコミどころ満載のエピソードを見続けてきたせいか、今回のエピソードは割とよく作り込まれているなぁ、という印象を持ちました。あらすじからは省いたのですが、実は親子が出産を控えて帰省している母親の元へ向かっているという何気ない事実が密かに伏線になっています。ドクガーラがこれを知らずに父親に化けていたため早々にボロを出し、ツヨシに看破されてしまうというわけです。おもわず「おぉ…」と唸ってしまいました。

ドクガーラは三度、志郎の抹殺に失敗しています。最初の失敗はまあいいとして、死体を確認せずに早合点した失敗から何も学んでいないのか、二度目に崖下に転落指せたときも、死体を確認せずに立ち去る愚を犯しています。で、結局三度目の戦いでは、一度目と同じようにV3を墜落死させようとするのですが、さすがにV3は同じ轍を踏まなかった。ハリケーンを使って墜落死を免れ、逆に空中戦でドクガーラを轢死させています。

ハリケーンに飛行能力があることは、主題歌「闘え!仮面ライダーV3」の二番にそれを示唆する歌詞がありますし、これまでも何度か飛行能力に近いような動きを見せたことはあります。しかし、それはどちらかというと単にジャンプして滑空する、という程度のレベルだったと思います。しかし今回は、空中で操作してターンした上にドクガーラを轢き殺すという離れ業をやってのけており、飛行しながら細かい操作すら可能という超性能ぶりが明らかになっています。火焔コンドルの時もコレを使えば良かったのでは…

あと、ツヨシが自分の目の前に吹っ飛ばされてきたドクガーラに角材で襲いかかるというシーンがあります。子供は大抵怪人に対しては恐れおののくだけの役回りであることがほとんどで、武器を手に怪人に立ち向かう子供は大変珍しい。V3はそのツヨシを助け出して、背中に背負って闘うわけですが、バッチリおんぶ紐を準備しているのが笑えます。こういう状態での殺陣は、実際には人形を背負って立ち回ったりするのが多いと思うのですが、今回はどうも実際に子役の少年を背負った状態で闘っていたようです。これは子役も殺陣師もどっちも大変だったろうな…。

また、このツヨシは、随所で健気な少年として描写されており、何かと斜に構えがちな筆者も素直に感情移入できる存在でした。泣きの演技もなかなか上手でしたよ。小塙謙士という子役で、後に「アクマイザー3」でレギュラー出演を果たしてますね。

脚本:鈴木生朗
監督:折田至

第37話「怪しの寺 ムササビ族の呪い!」第39話「人喰い植物 バショウガンの恐怖」
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