逆襲サボテグロン(『仮面ライダー』第15話)

あらすじ

仮面ライダーに変身した一文字隼人とサボテグロンの戦いは、サボテグロンの逃走で終わった。

サボテグロンは、隼人の自宅および立花レーシングクラブにサボテン爆弾を送りつけて攪乱する一方で、秘密裏に佐久間ダムを破壊して、その下流にある天竜市を混乱に乗じて占領する「Z作戦」を計画していた。

ショッカーの車両に張り付き、戦闘員になりすましてアジトに潜入した滝であったが、サボテグロンに露見し、捕らわれる。しかし、もう一人別の戦闘員になりすましていた隼人が彼を助け出し、二人で爆弾貯蔵庫に保管されていたサボテン爆弾を使用して、アジトのあちらこちらを破壊していく。

作戦を壊滅に追い込まれたサボテグロン。ショッカーにおける自身の栄光を破壊され、最後にライダーを道連れにしようと決戦を挑むが…

解説

旧1号編からの変更点

前回は長くなりすぎて全て解説しきれませんでしたが、「2号編」になってから様変わりした点は他にもありますので、まずはそこから。

第一に、冒頭のナレーション。

第14話では一文字隼人の存在が明らかで無かったため省かれてましたが、今回からは以下のような内容になりました。

「仮面ライダー一文字隼人は改造人間である。彼を改造したショッカーは世界征服を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーは、人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!」

本郷猛が一文字隼人に変わっただけかと思いきや、「世界制覇」が「世界征服」に変わっていたりと地味なマイナーチェンジが行われています。

第二に、仮面ライダーそのものの性能。

いわゆる、「変身ポーズ」が登場したのもここからです。旧1号ライダーは、ベルトの風車に風を当てないとライダーに変身できませんでしたが、2号ライダーは変身ポーズを取ることで、自力でベルトの風車を回して変身するという設定です。

旧1号ライダーの場合、風力で風車を回すことでダイナモがエネルギーを生成するという仕組みでしたが、2号ライダーの場合は自力で風車を回す。その風車を回すエネルギーはどこから? エネルギー保存法則的になんとなく怪しげな雰囲気がありますが…

最後に、ショッカーの戦闘員。

2号編になってから、従来の顔面ペイントでは無く、覆面をかぶるようになりました。もっとも、前話の冒頭で登場したメキシコ支部の戦闘員はアイマスクにペイントの従来の戦闘員だったので、覆面をかぶるようになったのは日本支部だけなのかもしれません。

この、戦闘員の覆面化は、今まで素顔だったことで少なからず個性が出て、ショッカーにとってもそれなりに重要な構成員というイメージだった戦闘員が、文字通りただの使い捨ての兵隊みたいなイメージに成り下がってしまった感はあります。

ただ、これには撮影上の都合も含まれていたそうです。

というのも、戦闘員を演じていたのは技闘を担当する大野剣友会のメンバーなのですが、それほど人数が居るわけではないので、ライダーに倒されたはずの戦闘員がまた居るぞ…? という状態になっていたらしいのです。戦闘員の覆面化は、そのあたりをうまく隠蔽するためのアイデアでもあったようです。

さらにそれを逆手に取り、ライダー側の人物が戦闘員になりすましてアジトに潜入するというシーンも増えていきます。戦闘員が覆面になったからこそ可能なシナリオです。

戦闘員と言えば、ショッカーには赤い制服の戦闘員と黒い制服の戦闘員がいますが、それぞれの役割に何か違いがあるのかはイマイチわかっていません。赤戦闘員は戦闘員のリーダー格と説明している文献もありますが、少なくともこの回では、赤戦闘員は作戦部員、黒戦闘員は監視部員という明確な役割の違いが与えられていました。

サイクロン号について

ここで、ライダーの愛車、サイクロン号について触れておきましょう。

実はサイクロン号には3つの異なるタイプがあるとされています。オリジナルのサイクロン号、改造サイクロン、そして新サイクロンです。ただ、劇中ではサイクロンと改造サイクロンについては、その違いに触れられることはありませんし、マシンの形状が変わっていることに対して何の説明もなされません。

一般的には、オリジナルサイクロンは旧1号、改造サイクロンは旧2号が使っているとされているようですが、それも厳密には違います。実際、今回の第15話では、2号が改造サイクロン、オリジナルサイクロンの両方を使っているのが確認できます。後に1号が新1号となって戻ってきて以降は、乗っているのはもっぱら改造サイクロンです。

これは推測ですが、おそらく、当時の現場的には、どちらも同じサイクロン号として扱っていたのではないかと思います。オリジナルサイクロンは、どちらかというとオンロード仕様で、素人目には細かいハンドル捌きやオフロード走行がやりにくそうに見えます。なので、やや装飾が簡素化された、やや激しいバイクアクション撮影用の車体が別に用意され、それが後に「改造サイクロン」として、オリジナルサイクロンとは別のマシンであるという設定が後付けされたのではないでしょうか。

ただ、新サイクロンは別で、これは第68話からニューマシンとして新しく実戦投入される描写が劇中で描かれています。

さて、あれだけ鳴り物入りで日本に乗り込んできたサボテグロンですが、その最後は、ライダーによって作戦が実行前に妨害され、過去の栄光を全て無にされた腹いせにライダーを道連れに死のうとするも、突進をかわされてサボテン爆弾で自爆するという、ちょっと締まりのないものだったことは付記しておきましょう…

脚本:伊上勝
監督:折田至

第14話「魔人サボテグロンの襲来」第16話「悪魔のレスラー ピラザウルス」
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