恐怖の天才人間計画!(『仮面ライダーX』第7話)

あらすじ

大門寺博士の天才人間計画。それは、常人の10倍の知能、運動能力を持つ人間を作り出す計画。博士は既に理論をある程度完成させ、特に優れた小中学生達を選んで、本人達の同意のもと、特殊な薬を服用させていた。

しかし、被験者となった小中学生24人のうち23人が、飛び降り自殺で命を絶った。特に彼らに自殺する動機のようなものは無い。しかも、23人目の犠牲者は大門寺の娘・あや子であった。父・啓太郎から大門寺の研究について耳にしていた敬介は、大門寺を訪問。大門寺は、被験者達の自殺が、薬の副作用によるものではと案じていた。しかも、生き残った最後の被験者は、大門寺のもう一人の娘・冬子だった。

実際は、被験者達の死は自殺では無く、GODの手によるものだった。大門寺をGODに引き入れようと企んだGOD総司令は、怪人イカルスに命じて被験者達を次々と催眠にかけて、高所から墜落死させていた。イカルスは大門寺の助手・瀬山の真の姿でもあった。

あや子の葬儀中に、冬子が戦闘工作員に攫われる。後を追う敬介の前にイカルスが現れて妨害するが、敬介はXライダーにセットアップしてこれを撃退。冬子は、霧子によって保護されていた。

いつも涼子を追って現れる霧子に、「君の正体は何だ」と詰め寄る敬介に、霧子は自分が涼子の双子の妹であることを初めて明かし、さらに「姉は今でもあなたの婚約者だ」と告げ、困惑する敬介を残し立ち去った。

GOD総司令は方針を転換。GOD入りを拒否した大門寺を、敬介や冬子もろとも始末することを決め、イカルスに遂行を命ずる。

イカルスはバイクで移動中の敬介を上空から爆撃したが、敬介は辛うじて難を逃れ無事だった。続けて大門寺を襲撃しようとしたイカルスの前に現れ、大門寺殺害を阻止。イカルスはその場を戦闘工作員に任せて早々に離脱し、冬子を暗示にかけてそれまでの犠牲者同様墜落死させようとしたが、間一髪で霧子がそれを防いだ。

敬介は冬子を霧子に任せ、イカルスと対峙。宙を飛び回るイカルスをライドロープで引きずり下ろし、Xキックを浴びせてイカルスは爆死。

イカルスが倒れ、冬子の命の心配も無くなった大門寺は、天才人間計画の放棄を決めた。「やはり人間は、自然にしておくべきだ、そう思ってね」「そうしてください」。改造人間は、自分で最後にしたい。そんな密かな願いを胸に、敬介の戦いは続く。

解説

雰囲気が硬い

冒頭で23人の小中学生が飛び降り自殺するというショッキングな展開から始まります。これまでの『仮面ライダー』では『仮面ライダーV3』では、視聴者と同じ年齢層の少年少女が悪の組織に直接殺害されるという描写はほとんど無いのですが、今回はいきなり23人も死なせるところから始まる。前話でも、GODによって直接的に両親を奪われた少女が登場してますし、『仮面ライダーX』の序盤は、過去の2作とは異なり、どことなく硬質な雰囲気と言いますか、安易な救いが期待できない独特の空気感が漂っています。

正直、今回改めて観直していて、この雰囲気は小学生の視聴者にはちょっと重すぎかもしれないなぁと感じています。あらすじからは省いてますが、冬子は瀬山を慕っていて、最後まで瀬山の正体がイカルスと知らぬまま、姉に続いて想い人をも失うという悲しみを背負っています。騙されていたことにも知らぬままに。

『仮面ライダー』の旧1号編とは、またベクトルの違う重さ。主人公のみならず、周囲の人間までが救いの無い状況に追い込まれている。これは正直、観ていてキツいものがあります。

涼子と霧子

閑話休題。

番組放映開始時から既に退場が決まっていたらしい涼子と霧子。

涼子は、本当にGODに魂を売った悪人なのか、あるいは実は虎視眈々と内部からGOD壊滅を伺っている正義の人か、どっちと考えても矛盾するような人物描写が続いていました。制作内部でも涼子の人物像が固まりきってなかったという話もありますが、今回「姉は今でもあなたの婚約者」という霧子の発言で、どうやら後者として退場させることが、ここに来てようやく固まったのでしょう。実際、霧子と時間差で冬子を助けに入ろうとした描写もありました。

次回がいよいよ最後の登場になりますが、涼子にはなかなかに劇的な結末が用意されることになります。

脚本:長坂秀佳
監督:折田至

第6話「日本列島ズタズタ作戦!」第8話「怪!?小地球・中地球・大地球」
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