怪人ギラーコオロギせまる死のツメ(『仮面ライダー』第69話)

あらすじ

ショッカーの新しい改造人間・ギラーコオロギのツメには、伝染力のある毒が仕込まれている。毒に伝染した者は、同じ毒を振りまく赤いツメを持ち、ねずみ算式に感染者を増やした後、3日後に死亡する。さらに、殺人音波で周囲の者を死に至らしめる直接的な殺傷能力を持つ、殺戮能力に特化した改造人間だった。

手始めとして、ギラーコオロギは、自然科学研究所を運営する猛の先輩にあたる小川所長を殺人音波で洗脳。小川が開催している日曜学校に訪れた子供達を襲い、全員赤いツメの殺人鬼に仕立て上げた。日曜学校に参加するつもりが、たまたま寝坊して遅れて到着したナオキとミツルがその現場を目撃し、猛に連絡。しかし、連絡中に二人は戦闘員に捕まってしまう。

猛と滝が自然科学研究所へ向かうと、ギラーコオロギらショッカーの一団に襲われる。ギラーコオロギの放つ殺人音波に苦戦し、どうにかその場を逃れた猛は、改めて研究所に潜入し、小川と出会う。ショッカーのアジトから逃れてきたという小川についてアジトに潜入するが、これは罠。猛はアジトの一室に閉じ込められてしまう。変身して壁をぶち破って脱出しようとするも、壁も床もショッカーが開発した衝撃吸収マットに覆われた部屋はライダーの全ての攻撃を吸収する上、ジャンプ能力も奪っていた。

脱出不能のライダーを、天井からギラーコオロギの殺人音波が襲う。ライダーは苦悶の中、天井の鉄格子にマフラーを巻き付け、スクリューキックを放って脱出に成功した。

アジトの外でのギラーコオロギらとの戦い。殺人音波を巧みにかわしつつ、戦闘員から奪った剣をギラーコオロギの眉間に突き刺し、音波発信能力を奪うと、空中でライダーキックをぶち当ててぎ勝利した。

滝やナオキ達も元の姿に戻り、小川の洗脳状態も解け、騒動は解決。街に再び平和が戻った。

解説

殺人音波再び

殺人音波…。ついぞ5話程前に、同じような能力を持つ怪人がいましたね(セミミンガ)。その時の解説でも述べましたが、怪人単体で放つことが可能で、その影響は全方位に拡散し、音波であるが故に防御するすべも無い。まさにとんでもない大量殺戮兵器なわけですが、ギラーコオロギはその殺人音波の特性をそのまま受け継いでいるのみならず、ツメに仕込まれた感染性の毒を使った大量殺戮能力まで付加されているという、セミミンガの上位互換とも言える、とんでもない奴です。

ただ、周囲で戦っていた戦闘員すら巻き込まれて犠牲になるような無差別性なのに、何故か地獄大使は平然としているという…。まあ、大幹部ですからね、大幹部。

殺人音波の精度の悪さもセミミンガの時からあまり改善されてはいなかったようで、吸収マットの部屋に閉じ込められているライダーならともかく、外に出て自由に動き回るライダーには、なかなか音波が当たらない(指向性は無いはずなのに…)。結局、倒され方もセミミンガと同じような感じでしたとさ。

ショッカーの大発明

さて、これまで、どんなに頑強な密室にライダーを閉じ込めても、力業での脱出を許してきたショッカー。その対策として、彼らは画期的な発明をします。その名も「吸収マット」。強固さを追求するのではなく、ライダーの力を吸収してしまう、今で言うところの「低反発マット」って奴ですね。それで部屋の壁という壁を覆ってしまう。ライダーパンチもライダーキックもマットの低反発に吸収され全く破壊できない。床にも敷き詰められており、ジャンプすることもできない。

改めて観たとき、思わず「おぉ…」と唸ってしまいました。現代では比較的ポピュラーな技術を、ショッカーはこんな時代から既に実用化していたのですよ。いやー、それにしてもあの部屋、めっちゃ寝心地良さそうですね!w

それでも脱出を許してしまうのですが、まああれをショッカーの手落ちと言うのは酷でしょう。だって、あのライダーの脱出方法って、物理法則をガン無視してますもん…

脚本:島田真之
監督:山田稔

第68話「死神博士恐怖の正体?」第70話「怪人エレキボタル火の玉攻撃!!」
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