ヘドロ怪人 恐怖の殺人スモッグ(『仮面ライダー』第85話)

あらすじ

ゲルショッカーの「殺人スモッグ東京全滅作戦」は、合成改造人間ウツボガメスが吐き出す、人間を一瞬にして白骨化する殺人スモッグを東京全土にまき散らす作戦。しかし、囚人を使った殺人スモッグの実験では、何ら殺傷効果を発揮できなかった。

ウツボガメスの殺人スモッグを完全な物にするためには、二年前の田子の浦レベルに汚染されたヘドロを摂取する必要があり、ゲルショッカーで合成できるレベルのヘドロでは汚染度が足りない。そのためブラック将軍は、ウツボガメスに指示して都市公害研究所の研究員・岡崎を拉致し、汚染度の高いヘドロを合成させることでウツボガメスの殺人スモッグを完成させた。

白百合団地を舞台にした再実験で、今度こそ殺人スモッグの殺傷力を確認したゲルショッカーは、作戦に先立ち仮面ライダーの始末を優先。猛の知己でもあった岡崎を操って猛を多摩丘陵に呼び出し、罠にかけて密室に幽閉することに成功。殺人スモッグで抹殺しようとするが、ライダーに変身した猛は密室の壁を力任せに突き破って脱出に成功する。

しかし、岡崎の頭部に埋め込んだコントロール装置を未だに握っているブラック将軍は、間髪入れずウツボガメスらに岡崎が保護されている猛のマンション襲撃を指示。マンション屋上の戦いの最中、岡崎に猛達の背後を襲わせ、これを捕縛することに成功する。

猛、滝、岡崎の三人を処刑台にくくりつけ、まず猛から殺人スモッグで処刑しようとしたウツボガメスだったが、殺人スモッグを浴びせたはずの猛の姿が忽然と消えたかと思うと、仮面ライダーとなって現れた。

切り落とされた頭部でライダーの腕に噛み付いて見せたり、甲羅ごと宙を飛んで体当たりする攻撃でライダーを苦しめるウツボガメスだったが、スモッグを吐く頭部を破壊され、体当たりもライダーパンチでたたき落とされると、最後はライダーキックの直撃を食らい、爆死した。

解説

2年前の田子の浦のヘドロというやけに具体的な固有名詞が登場しますが、これは当時実際に存在した公害問題を指していますね。製紙工場の汚水が田子の浦港を汚染し、悪臭や健康被害、港湾機能の毀損などの問題を引き起こしています。

1960年代から問題が深刻化し、1970年頃から本格的な対策と処理が進められており、最終的に全ての処理を終えたのは1981年。つまり、『仮面ライダー』の放映期間中も、なおその途上にあったということになります。ただ、「2年前の」とわざわざ指定しているあたり、放映当時は、多少なりとも処理が進んでいることでいくらかマシにはなっていたのでしょう。

さて、今回、ゲルショッカーが殺人スモッグの実験に冒頭で失敗しています。戦力にならなくなった戦闘員や奴隷達を使って殺人兵器の実験を行うのはショッカーの頃からの恒例行事ですが、これに失敗するというのは非常にレアなケースですね。少なくともショッカー時代は無かったことだと思います。

怪人ウツボガメスは頭部を取り外して遠隔操作によるかみつきなどの攻撃ができるという非常にインパクトのある能力の持ち主。似たような能力の持ち主にGODのヒュドラーがいますが、あれは頭部を落とされても再生できるというだけで(それはそれで凄い能力ではあるが…)、頭部が独立して活動できるわけではないですからね。ただ、頭部とはいっても実際には頭の形をしたオブジェであり、実際の頭部の機能は胴体の中に埋め込まれていると考えるべきかと思います。ライダーに頭部を破壊されても普通に戦ってましたからね。

ウツボガメスとの最後の決戦前、処刑台にくくりつけられた状態で殺人スモッグを浴びせるも、猛の姿は忽然と消えており、崖の上からライダーの姿で現れる。これは引田天功もビックリのイリュージョンですな。

脚本:島田真之
監督:山田稔

第84話「危うしライダー!イソギンジャガーの地獄罠」第86話「怪人ワシカマギリの人間狩り」
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