呪いの大幹部 キバ男爵出現!!(『仮面ライダーV3』第31話)

あらすじ

深夜のライダー隊本部に、山梨県小渕沢の宮田トシ子隊員から、デストロンの怪人出現との緊急連絡がもたらされた。しかし、直後に本人によって報告が取り消され、通信は終わった。その場ではとくに不審に思わなかった藤兵衛だが、翌朝改めて報告の録音を聞き直すと、緊急報告から報告の取り消しの間に、奇妙な雑音が混じっていることに気づいた。

一足先に小淵沢に向かっていた志郎は、現地で謎の太鼓の音と、男の声を聞く。声の主は、自らをデストロンの新たな大幹部・キバ男爵と名乗った。既に村はキバ一族のドクロイノシシ率いるデストロン一味に占領されている状態だった。

一方、佐久間は志郎に一足遅れて小淵沢に到着。彼を出迎えたトシ子の案内で、宮田家にいるという志郎と合流しようとするが、その場に居たのはドクロイノシシと戦闘員。トシ子は母親を人質に取られ、デストロンの計画の片棒を担がされていたのだった。志郎の機転で、一度はトシ子、母親、佐久間ら人質全員を開放するが、ドクロイノシシに操られた村の住民達に取り囲まれ、結局再び捕らわれてしまう。

ドクロイノシシによって火あぶりの刑で処刑されようとしていた志郎だったが、ハリケーンを遠隔操作して脱出。V3が森の中で発見したドクロイノシシの棺を破壊すると、キバ男爵が叩く呪いの太鼓の音色を受け取れなくなったドクロイノシシの戦闘力は激減。V3フライングキックを食らって爆死した。

ドクロイノシシに操られていた村人達も意識を取り戻し、村に平和が戻った。しかし、キバ男爵率いる新しいデストロンによる「第二次攻勢」は、まだ始まったばかりだ。

解説

キバ一族とデストロンの変容

ドクトル・ゲーに代わる新しい大幹部・キバ男爵の初登場回です。見るからに武闘派なドクトル・ゲーとは対照的に、呪術師であるキバ男爵の大幹部就任は、デストロンの雰囲気も一変させています。呪術や儀式といった要素がデストロンに取り込まれ、科学的な秘密結社だったはずのデストロンは、あたかも邪教集団のような怪しげな組織に様変わり。

このあたりの展開は、『仮面ライダー』という番組の本来目指していた「怪奇アクション」への一時的な回帰ともする向きもありますが、前作「仮面ライダー」の旧1号編ともまた路線が違うように思います。旧1号編は、あくまで日常の生活空間をベースに、そこに忍び寄る得体の知れないショッカー軍団の恐怖を描く路線でしたが、今回のキバ男爵編は、呪術や邪教を持ち出すという、怪奇性の演出としてはある意味安直な方法がとられており、残念ながら旧1号編ほどの深みには欠けると思います。とはいえ、安直であればこそ、その不気味さに迫力があるのもまた事実。

デストロンの怪人も、それまでのような機械と動植物を融合させた「機械合成怪人」は廃され、代わりに「キバ一族」という設定のもと、牙を有する動物を単独モチーフとした怪人に代わります。

小淵沢

さて、今回の舞台となった山梨県の小淵沢町ですが、2006年の「平成の大合併」により、現在では北杜市の一部となっています。劇中では「村」という呼ばれ方をされていますが、1974年当時の小淵沢は町政であり、その下に村の名が付く行政区もありません。

小淵沢と言えば真っ先に思いつくのは、私の場合は駅弁ですね。鉄道ファンには「駅弁の聖地」などとも呼ばれているらしく、全国的にも有名です。私は残念ながら訪れたことはありませんが、いずれ機会があれば、ぜひ駅弁をいただいてみたいですね。

V3のマスクの異変

今回から目立ち始めていますが、V3のマスクの下半分の部分が、本来白だったはずの者がすっかりグレーに変色してしまっていますね。これから回を追うごとに、この顎のグレー化はさらに顕著になります。

これは、アクションの都合上、下半分を上とは違う素材に変えた結果、色の劣化が早くなってしまい、下半分が次第にグレーへと変色していったということなのだそうです。

いやはや、何が災いするかわからないものですね。

脚本:伊上勝
監督:折田至

第30話「ドクトル・ゲー!悪魔の正体は?」第32話「鬼火沼の怪 ライダー隊全滅!?」
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