危機一髪!キバ男爵対三人ライダー!!(『仮面ライダーV3』第34話)

あらすじ

セントラルスポーツに、姉小路と名乗る女性が訪問。彼女は、以前志郎の世話になったと、お礼の品を純子に手渡し去って行った。念のため、ライダー隊本部に詰めていた猛が包みを開封するが、中に入っていたのは不気味な人形。それは、ドーブーの呪いの人形だった。人形を手に持った猛は、人形に塗布されていた浸透性の猛毒に犯され、意識を失ってしまった。姉小路の正体は、3人ライダーへの復讐に燃えるキバ男爵が召喚した、キバ一族の母なる魔女・スミロドーンであった。

スミロドーンは、藤兵衛達が猛を搬送した中央病院に手を回し、猛の身柄を奪うことに成功。さらに、藤兵衛達の連絡を受けて病院へ向かっていた志郎を襲撃。志郎はV3に、スミロドーンは原始タイガーに変身して激突するが、スミロドーンの火炎噴射の直撃を受けV3は敗退。気を失ったままアジトで身柄を拘束されてしまう。

病院には、キバ男爵のアジトを捜索していた隼人が、志郎と純子の通信を傍受して駆けつけていた。スミロドーンはその隼人をも襲撃。両者変身して激突したが、2号ライダーもまたスミロドーンの火炎噴射の餌食となって斃れた。しかし、この時スミロドーンが隼人の死体を確認しなかった手落ちが、後々にデストロンにとっての災いとなる。

気絶した状態でアジトに連れ込まれた猛と志郎。実は二人とも既に意識は回復しており、キバ男爵とスミロドーンが立ち去ったのを見計らって拘束具を引きちぎる。しかし、部屋には二人の変身を封じる仕掛けが施されており、変身できない二人は部屋から脱出することができなかった。

首領の前で3人ライダーに勝利したと喝采を挙げるキバ男爵とスミロドーン。しかし、高笑いする二人に首領の叱責が飛ぶ。「愚かな魔女め!一文字隼人に尾けられたのに気づかないのか!」

スミロドーンとの戦いで生き残り、彼女をアジトまで尾行した隼人によって猛と志郎は救出される。勢揃いした3人の前に、決死のスミロドーンは原始タイガーに変身し挑みかかる。志郎達も変身し、これを迎え撃つ。3人ライダーを相手にしても引けを取らない立ち回りを演じた原始タイガーだったが、やはり多勢に無勢は否めず、ダブルライダーが駆る2台のサイクロンにV3がまたがり突撃する「ライダートリプルパワー」で跳ね飛ばされ、爆死した。

スミロドーンの死とともに、ドーブーの悪魔の祭壇も爆散。いよいよ窮地に追い込まれたキバ男爵の最後の作とは?

解説

キバ一族とスミロドーン

冒頭では、猛がライダー隊本部で新隊員の任命式を執り行うという、ある意味懐かしい光景が描かれています。元々、少年仮面ライダー隊は猛が藤兵衛とともに立ち上げた組織ですからね…。

キバ一族の怪人達は、それまでデストロンの主力を張っていた機械合成怪人達とは異なり、人間を素体とした「改造人間」ではなく、キバを有する獣が呪いの力で覚醒した、獣の怪人とも言うべきものです。今回のスミロドーンのように人間態を持ち合わせていたり、人間の身体を乗っ取ることはできますが、ベースは人間ではない。スミロドーンも、キバ男爵の呪いの儀式によって復活した、「全てのキバある獣の母」という位置づけになっており、機械的または生物的に人間を改造した怪人とは根本的に成り立ちが異なっています。

そのキバ男爵が前回あたりから使い始めているドーブーの呪文「ンードロミス、エレガミヨ」「甦れスミロドーン」のアナグラムだというのは有名な話。まあ、よくよく見れば、厳密に完全に前後反対になっているわけではないのですが、キバ男爵役の郷鍈治の怪演も相まって、不気味な邪教の呪文として十分な迫力を備えています。

そのスミロドーン、さすがにキバ一族の母たる魔女というのは伊達ではなく、首領にはこき下ろされましたが、3人のライダー達を立て続けに追い詰めていく様は大健闘と言っていいでしょう。猛を毒に冒し、さらには病院に手回しして猛の身柄を奪う手際の良さ。そこから志郎と隼人を個別に襲って勝利してしまう戦闘力。志郎と猛が拘束されていながら既に回復していたというチートを発揮しても、脱出できない仕掛けを用意しておく用意周到さ。隼人を破った後にきちんと身柄を確認しなかったのが唯一の詰めの甘さで、これが致命傷となってしまいましたね。

志郎の危険運転

ところで、志郎はよく手放しでバイクを走らせながら変身ポーズを決めるという芸当をやってのけるのですが、今回は隼人もこれをやります。ただ、志郎役の宮内洋は、実際に手放しでバイクを走らせながら変身ポーズを切ってみせる一部始終をカメラに取らせていますが、隼人役の佐々木剛はそこまで器用なことはできないようで、隼人の変身シーンではカメラアングルでごまかしていますね。まあ佐々木剛は前作で隼人役が決まった時点ではまだバイクの免許を持ってなかかったそうでまだまだ運転歴は浅かったでしょうし、そうでなくても宮内洋がやっていたのは、ミもフタもない言い方をすればただの危険運転なので、真似しろという方が無茶でしょうね。

さて、今回で猛と隼人の共演は終了なのですが、なんかラストは次回も普通に登場しそうな幕引きだったので、次回になって「あれ?1号と2号は?」と困惑した視聴者は相当数いたんじゃないですかね…

脚本:鈴木生朗
監督:塚田正煕

第33話「V3危うし!帰って来たライダー1号・2号!!」第35話「キバ男爵最後の変身」
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