2つの改造人間 怒りのライダーブレイク(『仮面ライダー[新]』第4話)

あらすじ

ネオショッカーが作り出した新しいタイプの改造人間、サソランジン。完全にゼネラルモンスターの命令で動き、本人には意識も記憶も無く、怪しまれる恐れが無い。それを利用してターゲットに近寄り、暗殺するという任務をゼネラルモンスターに操られるままにこなしていた。

一方洋は、城北大学の石渡博士が何者かに脅されているとの情報から、狙っているのはネオショッカーではないかと疑い、志度会長とともに一芝居打ってネオショッカーを誘き出した。石渡博士に変装した志度会長の前に現れたのはサソランジン。物陰に隠れていたライダーが迎え撃ったが、闘いの中でサソランジンのペンダントがたたき落とされると、突如サソランジンは錯乱してそのまま気絶。ライダーと志度会長の見ている前で、サソランジンは女性の姿に変わっていた。

彼女の名は美也。登山中にネオショッカーに拉致され、サソランジンに改造された。ライダーがたたき落としたペンダントは、サソランジンのコントロール装置だった。記憶を取り戻した美也は、改造人間にされた自分は、もう妹の可也に会うことは出来ないと泣き崩れる。それでも、自らも改造人間であることを明かした洋の説得で、既にSHCに保護されていた妹との再会を果たした美也。

しかし、抜け目のないゼネラルモンスターは、コントロールを失った美也が数時間後に自動的にサソランジンに戻るよう仕掛けを施していた。突然の発作に苦しみ、徐々にサソランジンに変化していく自分の身体におののく美也。やがて完全にサソランジンと化した美也はそのままSHCを抜けだす。人間の姿は失っても美也の記憶も意識も残っていたサソランジンは、ゼネラルモンスターへの復讐に向かうのだった。

だが多人数のアリコマンドとゼネラルモンスターの前に多勢に無勢。ライダーが駆けつけた時にはすでにサソランジンは致命傷を負っていた。死の間際に、元の姿に戻った美也は「ゼネラルモンスターを倒したかった…妹を頼みます…」とライダーに託し、息を引き取った。

怒りに震えるライダーは群がるアリコマンドを蹴散らし、ゼネラルモンスターが撤退したアジト内部へライダーブレイクで突入。狼狽えるゼネラルモンスターに怒りの鉄拳を見舞う。突入の衝撃から、アジトは爆散。ライダーはすんでのところで脱出。ゼネラルモンスターは爆発に巻き込まれて果てたと思われたが…

解説

ハード路線の象徴

本作前半のハード路線を象徴するエピソードと言って良いでしょう。エピソード単体のインパクト的には私的には昭和シリーズの中でも1、2を争うものです。人間の身体を失った改造人間の苦悩を、ライダー本人ではなく、あろうことか主役怪人に背負わせるという前代未聞の脚本。しかも結局美也は救われることなく、妹を洋に託して息絶えるという、どこにも救いのない結末。ネオショッカーという組織の非道ぶりを強く印象づける内容と言えます。

私はこのエピソードをリアルタイミで見ていたかどうか記憶にはありませんが、後年、大学生の頃にレンタルビデオで見返したとき、衝撃で身体が震えたのはハッキリ覚えてます。

「私はもう二度と可也には逢えない私は二度と改造人間を作らせないよ!ゼネラルモンスターを倒す!」

自分のような哀しい存在を二度と作らせまいとゼネラルモンスターに報復を期するサソランジン。結局サソランジンはゼネラルモンスターが指揮するアリコマンド隊に始末されてしまうため、ライダーに倒される怪人は不在。当然、スカイキックも今回は無しという異例ずくめの展開。

ただ、上記の台詞、既にサソランジンの姿になっていたとはいえ、怪人役の八代駿の声だったのがちょっと…ここは美也の声の方が、もっと悲壮感が出て良かったんじゃないですかね。

主題歌

ここで本作のオープニング/エンディングテーマについて少し。

オープニングの「燃えろ!仮面ライダー」は個人的には昭和シリーズの主題歌の中でも好きな曲の一つです。メロディの躍動感、歌詞の勢い、そして水木一郎の熱い歌唱がうまくミックスした名曲だと思ってます。

エンディングの「はるかなる愛に賭けて」も名曲。これまでのシリーズではあまりなかったしっとり系の曲で、特に今回のようなハードな物語の余韻に浸るには良い曲ですね。似たような路線のエンディングテーマは、初代『仮面ライダー』の末期で使われた「ロンリー仮面ライダー」、あとは第三期シリーズの「Long Long ago, 20th Century」(『仮面ライダーBLACK』)、「誰かが君を愛してる」(『仮面ライダーBLACK RX』)、といったあたりですね。

オープニングで高揚感を作り、エンディングでしっとりと余韻に浸らせる、そういう組み合わせが個人的には好きで、この『仮面ライダー[新]』のオープニング/エンディングの両曲は、そういう意味でベストだったんですよね。

番組後期の路線変更と共に、オープニング/エンディングとも違う曲に差し替えられてしまうのですが、これは個人的には残念な変更でした。新しいオープニング/エンディングは個人的にはどちらもイマイチ感が強いです。

脚本:伊上勝
監督:田口勝彦

第3話「勇気だ!コウモリ笛の恐怖」第5話「翔べ 少女の夢をのせて」
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