「仮面ライダー本郷猛は改造人間である。彼を改造したショッカーは、世界制覇を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーは、人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!」
これは、シリーズの元祖である「仮面ライダー」の番組冒頭で語られるナレーションです。昭和世代の仮面ライダーファンならば、そらで暗唱できて当たり前と言っていいくらいの有名なフレーズです。
そう、改造人間である彼を改造したのは、他ならぬ悪の組織であるショッカーなのです。本郷猛は、その身体能力とIQ600(!)という常人離れした知能に目を付けたショッカーにより誘拐され、ショッカー配下のサイボーグ、すなわちショッカーの怪人となるべく改造されたのです。
辛くも彼は洗脳手術を受ける前にショッカーからの脱出に成功します。
人間としての肉体を理不尽に奪われ、常軌を逸した能力を持つ改造人間とされてしまった本郷猛。元の人間の体に戻りたくても、それは叶わない。そして、世間がそんな常人離れした彼の姿を見れば、遠い星から来た宇宙人(本郷猛は「遊星人」という言い方をしている)だと思われかねない。間違いなく世間から白眼視される。自分のこの力は世間から隠さなければならない。
そのように世間の目におびえながら、彼はそれでも、人間達の自由を奪おうとするショッカーと戦う決意をするのですが…
敵となるショッカーの怪人は、やはりショッカーによって改造された改造人間達。言うなれば自分の同類達です。人間でありながら人間ではない苦悩を、ある意味理解・共有できるかもしれない同類達と、たった一人で戦わねばならない地獄。
これこそが、仮面ライダーの原点とも言うべき主人公の姿なのです。
例外もありますが、昭和仮面ライダー達は仮面ライダーとなって悪と戦う経緯の中に、何かしらの悲しみを背負っています。
その孤独で悲哀に満ちた主人公像こそ、昭和仮面ライダーの重要な特徴なのです。