殺人ヤモゲラス(『仮面ライダー』第12話)

あらすじ

白川博士と助手の柴田は、照射しただけで対象を殺傷・破壊することができる破壊光線を完成させた。しかし、研究の悪用を恐れた白川博士は、研究の封印を決意。誰にも告げずに、その成果を記録したマイクロフィルムを収めたロケットをペンダントにして、妹のマチ子にプレゼントとして渡した。

しかし、助手の柴田はショッカーの協力者だった。白川博士のもとから失踪した後、改造手術を受けてヤモゲラスとなった彼は、ペンダントごとマチ子を誘拐し、破壊光線を完成させてしまう。

そして数人の人間を破壊光線の実験台にした後、さらなる巨大な破壊光線照射装置を作るべく、マチ子を人質にして白川博士を呼び出す。

白川博士の家に残されていたメモから彼の行き先を知ったルリ子と猛は、急ぎ現場へと急行するが…

解説

科学と兵器

照射するだけで破壊力を持った光線。白川博士は悪用を恐れて研究の封印を考えます。

ノーベルとダイナマイトの逸話を持ち出すまでもなく、科学の成果を殺傷兵器に転用するのは古今東西よくある話です。ノーベルのダイナマイトも、元々工事用の安全な爆薬として開発されたもの。本来、平和利用を想定していたものですが、のちのち戦争用兵器としてその技術が転用されます。それを嘆いたノーベルが設立したのが、現在も続く「ノーベル賞」であると言われています。

では、白川博士は何を意図してこのような研究を完成させたのでしょうか。研究が完成したときの彼の様子からも、殺傷武器を意図して開発したわけでは無さそうです。では、この破壊光線を平和利用するとしたら?

…やはり工事目的ですかね?あるいは、出力を絞れば細かい工芸細工なんかにも使えるかもしれませんね。

苦心の制作陣

さて、このエピソードの撮影時には、本郷猛役の藤岡弘は既に怪我で出演不能になっていたわけですが、その予備知識を持ってこのエピソードを見ると、制作陣苦労してるなぁ…というのがよくわかります。

猛とルリ子がバイクで併走するシーンがあるのですが、猛は巧妙に顔を隠すような姿勢を維持しています。おそらく、演じているのは藤岡弘ではない誰かでしょう。そして猛の顔が写っている画面になると、それまでとは明らかに画面の色調が違うので、別のシーンから流用しているのがバレバレです。

また、白川博士と接触して、ショッカーの動きを探るという、本来ならば猛の役回りであるところを、今回はルリ子が担当しています。さらにはルリ子は戦闘員との立ち回りまでこなします。

ルリ子が白川博士のメモから彼の行き先を探るシーンでは、猛がその屋根裏から一部始終を盗み見しています。そして、彼女とは別に現場へ急行するのです。ハッキリ言って猛のこれらの行動にまったくの合理性が無いのはあきらかです。なんのために行動をとるのか、ストーリー的には意味不明なのですが、なんとか本郷猛の登場シーンを挟むための、シナリオ上の苦肉の策でしょうね。

そんな苦し紛れの作劇も、次回でいったん一区切りとなります。

ちなみにヤモゲラスの最後は、白川博士に破壊光線を浴びせられ爆死するというもの。ライダーではなく素人に殺された怪人って、歴代シリーズでもこのヤモゲラスが唯一じゃないですかね?

脚本:滝沢真里
監督:折田至

第11話「吸血怪人ゲバコンドル」第13話「トカゲロンと怪人大軍団」
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