魔人サボテグロンの襲来(『仮面ライダー』第14話)

あらすじ

世界征服を企むショッカーのメキシコ支部では、既に征服計画の90%が完了していた。そのメキシコ支部を統括する改造人間サボテグロンは、首領にその指揮能力を買われ、征服計画が最も遅れている日本支部へと派遣された。

事前にメキシコ支部よりショッカーの幹部が日本に到着すると、FBI本部からの通信で知った滝は、その幹部を追跡して日本へやってきたFBI捜査官と合流。捜査官が掴んでいる幹部の行き先へと向かった。だが、実はこの捜査官こそ、変装したサボテグロンであった。

一方、それまで経営していたスナック・Amigoをたたんで、新たに念願のオートショップを開店するとともにレーシングクラブを立ち上げた藤兵衛。最近さっぱり姿を見せない本郷猛をいぶかしがっていると、店の外に止めていたサイクロン号が全自動モードに入っているのを確認。藤兵衛はこれに乗って、サイクロンに本郷の元へ案内してもらおうとするが、そこで滝がサボテグロンに教われる現場に遭遇する。

強力なサボテグロンの攻撃の前に絶体絶命の二人の前に、仮面ライダーが出現。サボテグロンから二人を救うも、ライダーは二人の前から姿を消す。

立花レーシングクラブに戻り傷の手当てをする藤兵衛と滝。そこに、見知らぬ青年が訪問する。フリーカメラマンを自称するその青年は、一文字隼人と名乗り、藤兵衛が置き去りにしたサイクロン号を届けに来たとだけ告げ、立ち去る。

ショッカーのアジトを探るべく山奥に侵入した藤兵衛と滝の目の前に、先回りしていたかのように再び現れた一文字隼人。彼の正体は、ショッカーの別計画を追って外国へ旅立った本郷猛に代わり日本を守る、新たな仮面ライダーだった。

解説

一文字隼人・登場

怪我で一時降板した藤岡弘に代わり、この回から新たに、佐々木剛が演じる一文字隼人が主役として登場します。

佐々木剛に主演交代する経緯にも紆余曲折あったようで、当初、彼はこのオファーを固辞したそうです。「藤岡君の怪我につけ込んで主演を奪うようで気が引ける」と。なんとかスタッフが「藤岡を助けると思って」と拝み倒して、ようやく引き受けてもらったそうです。

これには藤岡も後年、「本来ならばこちらから頭を下げてお願いするところなのに、なんと筋の通った男だろう」と著書で感謝を述べていました。

一文字隼人が変身する仮面ライダーは「仮面ライダー2号」と現在では呼ばれますが、この時はまだそのような呼び方はありませんでした。オープニングのクレジットも「一文字隼人/仮面ライダー:佐々木剛」となっています。

「仮面ライダー2号」という呼び方が使われ出したのは、本郷猛が復帰して主役を降りた一文字隼人が、後にゲストとして客演した時あたりだったはずです。

今でこそ当たり前のように歴代ライダーの一人に数えられていますが、藤岡弘のアクシデントが無ければ本来生まれることはなかったわけで、ある意味数奇なキャラクターですね。

2号ライダーのデザインは、旧1号の反省点を活かし、マスクは緑をベースにシルバーのアクセント、顎部は完全にシルバーになりました。そしてスーツの袖にも、長いシルバーのラインが施され、夜のシーンでも背景に溶けないよう工夫されています。

新章

さて、「新章突入」と銘打たれた今回は、主役交代以外にも随所に変更が見られます。

まず、本郷猛とともに、緑川ルリ子も彼を追って日本を発ったということになっており、ルリ子役の真樹千恵子も、前回限りで降板となりました。藤岡の復帰後も、彼女が復帰することはありませんでした。

しかし、ルリ子の親友・野原ひろみはそのまま続投。ひろみ役の島田陽子は、真樹智恵子と(言い方悪いですが)セット販売的な抱き合わせで出演枠をもらっていたそうなので、ルリ子が降板してひろみが続投、というのはちょっと意外な感じです。

その他、新レギュラーとして、マリ、ユリ、ミチの3人の女性、そして立花レーシングクラブに入り浸る少年・五郎も登場します。

マリ役の山本リンダの名前は平成世代の方も名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。昭和世代には割と有名な名前で、最初に子供タレントとして大ブレイクし、後にはイメージチェンジしてセクシー路線の歌手として再ブレイクした女性タレントです。この「仮面ライダー」への出演は、子供タレントとして大ブレイクした人気がやや落ち着いて、後のイメージチェンジへの過渡期に当たる時期だったと聞きます。

劇中以外での変化としては、オープニング曲ですね。「迫る~ショッカー♪」の有名な歌い出しで始まるこの曲『レッツゴー!ライダーキック』。第13話までは主演の藤岡弘が自ら歌っていましたが、今回からは藤浩一の歌唱に変わっています。

藤浩一と言うと、「誰?」という人が多いでしょうが、子門真人という別名義なら、平成世代の方でもきっと知っている人は多いでしょう。名前は知らなくても、彼の代表曲である「およげたいやき君」はきっと知っているのでは? ライダーシリーズでは「仮面ライダーアマゾン」の主題歌「アマゾンライダーここにあり」も歌ってます。「科学忍者隊ガッチャマン」の主題歌でも有名で、昭和のアニソンを語る上では欠くことのできないビッグネームです。

立花藤兵衛という男

ところで今回、サイクロン号が全自動操縦で藤兵衛を乗せて走るシーンがあります。今でこそ乗用車の自動操縦が実現しつつありますが、当時においてはとんでもないオーバーテクノロジーです。

ショッカーがライダー用に作ったマシンだから、それくらいの能力はあるだろうと思われるかもしれませんが、実はサイクロンはショッカーではなく、藤兵衛が作ったマシンだったりします。サイクロンのフロントに表示されているマークをショッカーのマークと誤解している人も多いですが、アレは立花レーシングクラブのマークです。おそらく、本郷猛も制作には関わっているのでしょうが、40年以上も技術を先取りしたこの藤兵衛という人物、飄々とした好々爺に見えて、実はとんでもない天才なのかもしれません…

脚本:伊上勝
監督:折田至

第13話「トカゲロンと怪人大軍団」第15話「逆襲サボテグロン」
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