あらすじ
大学の休暇を利用して半年ぶりに沖縄から東京へ帰ってきた水産大学生・神敬介は、船で到着した港で4人組の黒スーツの男達に襲われる。どうにか振り切ろうとして海へ飛び込み、謎の怪物にも追われながらもどうにか逃れ、父親の神啓太郎が教授を務める城北大学の研究室に逃げ込む。
敬介はそこで、神教授の助手であり、自分の婚約者でもある水城涼子と久々の再会を果たすが、神教授は不在だった。涼子によると、神教授は海岸の洞窟に造った隠れ家にいると。
神教授は、秘密組織『GOD』に身柄を狙われていた。GODとは、世界の対立する大国同士が密かに手を結び、日本の全滅を目論み組織した秘密機関。神教授はその優秀な頭脳に目を付けられ、GODに協力を求められていた。帰郷した敬介を襲ったのもGODの戦闘工作員であり、息子の敬介を人質に取ることで神教授を組織に取り込むためであった。
隠れ家を訪れる息子に手荒い歓迎をする神教授。息子が自分同様GOD機関に狙われたことを知る神教授は、敬介に赤いベストを与え、常に着用するよう厳命した。これは、防弾性能だけでなく、3000度の火や爆弾にも耐えるようにできている、神教授が発明した特殊ベストだった。
敬介は涼子とレストランで食事を楽しんでいる最中、足下に置かれたオブジェからGOD総司令の声を聴く。従わなければ命はないと神教授に伝えよ、と。自分たちが得体の知れない組織に狙われていることを実感する敬介。
そしてある夜。GODはついに行動を起こした。何者かが就寝中の敬介の部屋に忍び込み、敬介の特殊ベストを薬品で破壊した。目を覚ました敬介がその不審者を追いかけ、覆面を剥ぐと、それはなんと涼子だった。戸惑う敬介に、再びGOD総司令の声が。「お前達親子が、邪魔だからだ!」
涼子は見失うが、父の身に危険が迫っていることを感じた敬介は、海岸の隠れ家に急ぐ。しかし、時既に遅く、敬介がたどり着いたときには、神教授はGODの怪人・ネプチューンに隠れ家を襲われ、瀕死の状態だった。そして敬介も、その場に現れたGODの戦闘工作員に銃弾を浴びせられ、倒れた。
神教授は息子を救うべく、自らも瀕死の身体に鞭を打ち、最後の力で息子にサイボーグ手術を施した。そして自らの知識と人格の全てを、巨大コンピューター「神ステーション」に移植し、海底へと移した。
神ステーションにて、敬介に「仮面ライダーX」としての使命を説く神教授。
敬介は神ステーションでXライダーに「セットアップ」し、海岸へと戻る。そこにいたのは、GODの戦闘工作員。
「貴様、何者だ!」
「Xライダー!」
Xライダーは変幻自在の武器「ライドル」を駆使して戦闘工作員や怪人ネプチューンを蹴散らしていく。激しい戦いの末、左脚に負傷を負うも、必殺技「Xキック」を放ちネプチューンを倒し、父の仇討ちを果たした。
戦いを終えて負傷を負った左脚の手当をする敬介に、そっとハンカチを差し出す女性がいた。敬介が顔を上げると、そこにいたのは涼子と瓜二つの女性だった。自らを霧子と名乗ったその女性は、ハンカチを敬介に渡すと何も告げずにその場を去った。
解説
GOD機関とは
「GOD機関とは、世界の対立する大国同士が密かに手を握り、改造人間を使って日本全滅を狙う恐怖の秘密組織である」
本編中のナレーションで語られるGOD機関の説明です。「世界の対立する大国同士」。大人の事情で実際の国名はぼかされてますが、この時代の背景から考えると、この大国同士とは言うまでもなく「アメリカ合衆国」と「ソビエト連邦」を意識したものでしょう。
ソビエト連邦は既に消滅した国であるため、歴史の授業でしか聞いたことがない人もいるでしょう。東ヨーロッパ諸国を中心とする共産主義国家群の事実上の盟主として君臨し、自由主義陣営の盟主アメリカと激しく対立。一触即発のにらみ合いは「冷戦」(冷たい戦争の意)とも形容されました。
日本はご存じの通り、自由主義陣営としてアメリカと同盟関係にあるわけですが、本作ではそのアメリカとソ連が水面下で手を組み、日本を滅ぼすためにGOD機関を組織したと。ひどい話です、日本が何をしたって言うのか。
GODの怪人も一応、改造人間なんですね。あまり人間を改造して怪人にするシーンが本作ではあまり出てこないので、改造人間という感じでは今ひとつないんですよね。
Set UP!!
Xライダーの変身は、レッドアイザーとパーフェクターというアイテムを使った変身で、平成ライダー達のシステムを先取りしているとも言えます。変身のかけ声は「セッタップ!(Set Up!!)」。最後にパーフェクターを手で顎にはめ込む変身が斬新です。
ライドルという名の専用の武装はXライダーのアクションの要で、これまでは殴る蹴る一辺倒だったライダーアクションに新風を吹き込んでいます。ライドルスティックの棒術アクション、ライドルホイップの剣戟アクションは、他の昭和シリーズには無い特徴的な技闘で、一見の価値ありです。
それにしても、神教授が息子に使命を説くシーンはぐっときますね。この年になると、こういう親子の情で迫られると弱いんですよ…
さて、敬介を裏切った水城涼子と、同じ容姿を持つ女性・霧子。本作の序盤は、この二人を巡る謎を中心として展開していきます。
脚本:長坂秀佳
監督:折田至