アマゾンの毒蝶ギリーラ(『仮面ライダー』第56話)

あらすじ

とある山奥の渓谷で、自動車が断崖から転落する事故が3件も発生していた。しかし、中にいたはずの人は遺体も含めて一切見つかっていない。

不審に思い現場へ調査に向かった猛と滝は、転落現場に近い道路で、路面に落ちている謎の粉末を発見する。持ち帰って分析すると、それは猛毒成分を含む外国産の蝶の鱗粉だった。

その蝶に関する情報が欲しい。二人は、アマゾンから毒蝶を持ち帰った蝶の収集家がニュースになったことを思い出し、レーシングクラブのメンバー総出で当時の新聞記事を探した。その収集家、九条みわの住所は、事故現場からほど近かった。

あらためて現地へ向かう二人だったが、何か嫌な予感を感じていた二人は一計を案じ、まずは滝が先行して、みわの屋敷へ向かった。そして嫌な予感は当たった。九条みわは、自らが持ち帰った毒蝶を素材として改造手術を受けた、ショッカーの改造人間・ギリーラだったのだ。

ショッカーは、ギリーラの鱗粉から生成した猛毒を日本各地の貯水池に流す、「毒水計画」を企てていたのだった。断崖から転落した車に乗っていた人々は、毒薬生成の労働力としてかり出されていた。

滝を部屋に閉じ込めたギリーラは、時限爆弾を仕掛けて滝を屋敷もろとも吹っ飛ばそうとするが、これは滝からのSOS信号を受けて駆けつけた猛が阻止する。

ギリーラは一端その場を撤退し、レーシングクラブの藤兵衛を襲い、人質として捕らえた。

猛達はもう一度屋敷へと侵入するが、落とし穴の罠にかかり、地下のアジトに落とされる。そこにいたのは、藤兵衛を人質としてつれた地獄大使だった。降伏を迫られ、やむなく武器を捨てる二人をあざ笑いながら捕らえる地獄大使。

しかし、毒水計画に必要な毒薬の多くを猛の牢屋から近いところに放置していたため、機転を利かせた猛によって燃やされてしまった。作戦を台無しにされた地獄大使は激怒して、牢屋から出した猛に鞭打ちの八つ当たり。猛は隙を突いて戦闘員の拘束を逃れてライダーに変身した。

地獄大使を取り逃がしたものの、ギリーラが残った毒薬を持って貯水池に投げ込もうとしていたところに駆けつけ、間一髪でこれを妨害。その後も、なんとしても毒薬を貯水池に放り込みたいギリーラと、それを阻止しようとするライダーの攻防。最後はライダーが毒薬を持って飛び上がったギリーラをライダーキックで撃墜し、決着した。

解説

爆弾を巡るあれやこれや

屋敷の部屋に閉じ込められた滝。ドアの外から音を聞き、どうやら時限爆弾を仕掛けられたらしいことに気づく。ここまではいいのですが、「それもあと五分」と爆発までの時間まで言い当てるとは、何の超能力ですか?

後からかけつけたライダーに対してギリーラは「この中で滝が泣いている、行ってみろ!」とわざわざライダーに教えます。これは爆弾の爆発にライダーを巻き込む作戦だったようですが、ライダーに爆発前に発見され、逆に投げつけてられてしまいます。これだけでも結構間抜けですが、この爆弾の爆発力のショボさと来たら…。爆竹のちょっと大きな奴程度の爆発。これではギリーラが言ったような「屋敷ごと吹き飛ばしてやる」なんて無理。滝を閉じ込めた部屋のドアを破壊できるかすら怪しいレベルですわ。

オッチョコチョイ

地獄大使、捕らえた猛の目の前に毒薬を放置して、猛に台無しにされてしまう失態。さらには、それに激怒して猛に八つ当たりする際は、わざわざ牢から出して戦闘員二人で猛を拘束させているのですが、その程度で歴戦の改造人間である猛を完全に拘束することなど不可能なのは、これまでの実績からも自明だと思いますが…案の定、拘束から逃れられて、ギリーラも倒されて作戦は台無し。ちょっと「間抜け」と言われても仕方の無い大失態です。

『仮面ライダーV3』で他の幹部達とともに復活したときは、ゾル大佐に「おっちょこちょいなところがある」などと評されてますが、こういうところでしょうね。そういえば、その時も似たような失態を演じてましたね。

九条みわ/ギリーラを演じる建部道子は、いかにも「昭和美人」といった感じの女優さんです。演技もなかなか堂に入っていて、普段の声と、怪人態になる前のドスの利かせた声を演じ分け、さらにギリーラに変身するポーズはある種の妖艶さすら感じます。

脚本:滝沢真里
監督:山田稔

第55話「ゴキブリ男!!恐怖の細菌アドバルーン」第57話「土ぐも男ドクモンド」
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