怪人毒トカゲ おそれ谷の決斗!!(『仮面ライダー』第58話)

あらすじ

生化学の権威である大田黒博士は、死んだ生物を甦らせる「エックスアルファ液」の研究を完成させた。死後3日経過した犬を使用しての実験で成功を確認した博士は、助手の山本に完成したエックスアルファ液を城北大学へ運ばせる。

しかし、山本は大田黒の研究に目を付けていたショッカーの改造人間・毒トカゲに襲われた。毒トカゲは山本を殺して運搬中のエックスアルファ液を奪おうとしたが、エックスアルファ液は山本がアタッシュケースを落としたことで爆発、消失してしまう。

首領の指示により、地獄大使は方針を変更。大田黒を直接狙うと仮面ライダーに感づかれる可能性が高いため、大田黒のもう一人の助手である橋本ヨシコをターゲットにした。

しかし、朝に弟のキヨシを送り出したあとの橋本を誘拐したのはいいものの、忘れ物を取りに戻ったキヨシと五郎に目撃されたため、ことは結局猛に露見する。猛は橋本が大田黒の助手であることを知っており、大田黒の「画期的な研究」がショッカーの狙う本丸だと見抜いた。

毒トカゲは誘拐した橋本を大田黒研究所へ連行し、大田黒にエックスアルファの書類を渡せと迫るが、そこに猛と滝が乱入し阻止。毒トカゲは橋本のみをつれてその場で逃走する。猛はライダーに変身してサイクロンで追いつくも、人間を瞬時に溶かす毒トカゲの毒液を浴びてしまい、吊り橋ごと谷底に落とされた。

ライダーを倒し、橋本をアジトへ連行し、計画は成ったも同然と高笑いする地獄大使と毒トカゲ。しかし、首領はそんな二人を一喝する。
「ライダーはまだ生きている!」

首領に再度のチャンスを与えられた地獄大使は、アジトに大がかりな仕掛けを仕込んだ。橋本を拘束台に拘束し、丸鋸で橋本を処刑しようとしているところを猛達に見せつけ、助けに入ろうと丸鋸のスイッチを切ると、基地中に仕掛けた爆弾に電気が流れて大爆発…という仕掛けである。

大田黒研究所でショッカーの動きを待っている滝と大田黒の前に、テレビを通して地獄大使が橋本の処刑現場を見せ、2:30までに猛と二人でエックスアルファの書類をおそれ谷へ持ってこいと要求。滝は一人で先行して現場へ向かったが、戦闘員に苦戦し、結局橋本同様捕らえられてしまった。

大田黒から事情を聴いて後を追ってきたライダーがアジトに潜入する。慌てて丸鋸のスイッチを止めようとするが、罠仕掛けのことを知っていた橋本に止められる。ライダーが身体を張って丸鋸の下降を止めている間、滝が基地内の爆弾を全て撤去。橋本は無事に救出された。

アジトの外で、毒トカゲとの戦いとなる。厄介な毒トカゲの舌をライダーキックで千切り、続けざまの新技・ライダーヘッドクラッシャーで毒トカゲを倒した。

橋本は無事弟と再会を果たし、エックスアルファの書類も大田黒博士の手に戻った。

解説

まずショッカーの今回の作戦からしてツッコミどころ満載です。

大田黒の研究で、ロンドン博物館に死体が冷凍保存されている、2年前になくなった今世紀最大の物理学者と数学者を復活させて、兵器を開発しようというもの。

博物館に学者の死体が冷凍保存されているってどういう状況ですか!?

でも調べてみると、凶悪犯罪者をミイラにして「供養は不要!」とばかりにさらし者にしたり、亡くなった奇形児をホルマリン漬けにして展示しているような博物館が世界には実在するらしいですね。さすがにロンドンの博物館ではありませんが。

そして今回は地獄大使のマヌケっぷりが、これでもかとばかりに炸裂しまくります。

冒頭で山本からエックスアルファ液の強奪に失敗し、橋本にターゲットを切り替えて誘拐するのはいいのですが、誘拐のタイミングを誤って、弟キヨシと友人の五郎に現場を目撃されてしまうと言う失態。「ライダーに悟られないように」わざわざ大田黒本人ではなく橋本をターゲットにしたというのに、結局五郎に現場を見られて、一部始終が猛に伝わってしまう体たらく。

毒トカゲが吊り橋からライダーをたたき落とし、ライダーを倒したと高笑いするも首領に「ライダーは生きている!」と一括される情けなさ。…まあこれに関しては、なんで首領はライダーが生きていると知ってるんだ、という謎もありますけども。

さらに極めつけが最後の計画。あらすじに書いたとおり、橋本を拘束する拘束台に仕掛けをし、丸鋸で処刑するような状況を造り、丸鋸のスイッチを切ると基地中にしかけた爆弾が爆発するという仕組みを構築。ライダー達が橋本を助けようとすると、大爆発に巻き込まれるという趣向。で、この仕組みを地獄大使は、橋本の目の前でどや顔でベラベラと説明してしまうんですよこれが。当然、スイッチを切ると爆発するという仕掛けは橋本からライダーに伝わり、結局橋本は救出され、ライダーの爆殺も失敗。

もうね、アホかと、バカかと。

そういえば、冒頭で毒トカゲに殺された山本助手ですが、最後まで大田黒にも橋本にも全く顧みられることはありませんでした。まるで存在事態を忘れられたかのよう。安否を心配されることもなければ、彼がいなくなったことに何ら疑問を抱く様子もない。

…冷たいねぇ、この人たち(涙

脚本:島田真之
監督:田口勝彦

第57話「土ぐも男ドクモンド」第59話「底なし沼の怪人ミミズ男」
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