あらすじ
チョコの友人、マキの父親が10日前から行方不明となっていた。チョコが滝を呼んで、相談に乗ってもらおうとするが、ゲルショッカー戦闘員の一団が襲撃。一団を率いるゲルショッカーの新たな怪人が、マキを誘拐して車で連れ去ってしまった。
この怪人こそは、仮面ライダー打倒を悲願とするゲルショッカーが、仮面ライダー打倒のためだけに作り上げた改造人間・イソギンジャガーであった。
イソギンジャガーは本郷猛を誘き出すべく、わざとライダー隊員に見つかるようなルートを派手な車で逃走。計画通りライダー発見され追跡されると、地雷原に誘導したり、戦闘員のオートバイ隊を投入したりでライダーを翻弄したうえで、迎撃。
ライダー打倒に特化した改造人間イソギンジャガーは、高い戦闘力でライダーを追い詰める。瞬間的に姿を消しながら攪乱し、口から生える触手でライダーを雁字搦めにする。苦戦を強いられるライダーだったが、激闘の末、両者大ダメージを受けて倒れた。
その頃、ヘリコプターでイソギンジャガーの車を空から捜索していた滝は、乗り捨てられた車の中に放置されたマキを救出。ライダーとイソギンジャガーの戦闘現場へ向かうが、両者相打ちで猛は大ダメージを受け、イソギンジャガーは改造前の姿に戻っていた。それを見たマキが叫ぶ。
「お父さん!!」
イソギンジャガーこそ、行方不明になったというマキの父親だったのだ。
再び変身し激突するライダーとイソギンジャガー。ライダーはイソギンジャガーの頭部の変身装置を狙い、「ライダーポイントキック」を放つ。変身機能に異常を来し苦悶するイソギンジャガー。ライダーを殺せとひたすら戦いを促すブラック将軍の声も苦悶を深める。そんなイソギンジャガーの苦悶を開放したのは、自分を呼ぶ一人娘の声だった。
変身機能が完全に破壊され、人の姿に戻った父親。目の前に立つ愛娘の姿に、無くしていた記憶も取り戻した。卑劣なゲルショッカーによって分断された父娘は、涙を流して10日ぶりの再会を喜ぶのだった。
解説
原作者の石森章太郎御大が監督を務めたエピソードとして有名な回ですね。御大は脚本にも名を連ね、また、冒頭にイソギンジャガーに殺される釣り人役で出演もしているというマルチっぷりを発揮しています。(出演者としてはクレジットされていない)
で、その御大の監督ぷりですが…どうせ話題性だけだろうと思って観ていたら、どうしてどうして、なかなか唸らされる画作りっぷりですよ。いい意味で裏切られました。
正直、私はライダーシリーズの担当監督達の、個性って奴が識別できません。エピソードをひととおり眺めても、エンディングでクレジットを確認するまで、誰が監督かなんてわからないんです。しかし、この御大が担当した回は、御大の独自色って奴が色濃く出ています。それこそ出過ぎじゃないかってくらいに。そしてそれが、ものすごく効果的な演出として機能している。
私の拙い文章表現力ではその魅力をとても伝えきれる気がしませんが、それでもなんとか頑張ると…
まず、空撮を多用してきます。冒頭のモノローグシーンで流す都会の空撮映像が、これから何かが起きる、という漠然とした予感と不安を煽る。冒頭でイソギンジャガーが釣り人(御大)を殺害した後に、海岸を闊歩するシーンも、空撮で俯瞰的に写すことで、怪人の漠然とした得体の知れ無さが醸し出されています。
そして、音の使い方にも明確な特徴がありました。ところどころで敢えて音を消すことで、強い印象を残すような演出。猛の前に戦闘員のバイクチームが現れるシーンでの無音化なんて本当に見事で、普段はただのザコでしかない戦闘員がものすごく不気味な存在に見えるんですよ。
そういえば、猛がバイクでラリー車を探し回るシーンで、猛の一人称視点でカメラを回す演出もありました。ありがちそうに見えて、『仮面ライダー』では意外と見かけないカメラワークです。
あまりに個性が出すぎていて、当時の視聴者は「なんだこれ!?」という違和感の方が強かったかも知れません。子供向け特撮と言うよりは、サスペンスドラマに近い雰囲気を感じました。
是非一度、ご覧になってみることをお勧めします。とにかく、強烈な異彩を放っています。
脚本:石森章太郎、島田真之
監督:石森章太郎、長石多可男(監督補)