あらすじ
カマクビカメに追い詰められるライダーマン。しかしそこにV3が乱入し、ライダーマンを救出してアジトを脱出。アジトの外で追いすがるカマクビカメに、V3はライダーマンを先に逃がそうとするが、ライダーマンは「ヨロイ元帥は俺の力で倒す!」と拒否。それどころか、カマクビカメに挑みかかるV3をロープアームで邪魔する始末。
V3とライダーマンが対立関係になったのを確認したヨロイ元帥は、人間達をデストロンガスで襲うことで二人を誘き出して一気に片付けようと、カマクビカメに青葉団地を襲撃させる。しかし、思惑通りライダーマンとV3を誘き出し、二人が足の引っ張り合いをする状況に持ち込みあと一歩のところまで追い詰めるも、トドメを刺す前に二人の離脱を許してしまう。
志郎は、デストロンの犠牲となった助手達の墓参に訪れた結城の前に姿を現した。共闘を呼びかける志郎に、自らの裏切られた悲しみを語り、「デストロンの為に」ヨロイ元帥を自らの手で倒すことに固執する結城。そんな彼に志郎は、自身がデストロンから受けた悲しみを語り、改造人間としての苦しみをさらけ出して見せたが、結城は悩みを深めるばかりだった。
そんな中、藤兵衛の元に、幸恵がデストロンに攫われたという報せがもたらされる。それを盗み聞きしてデストロンのアジトへ向かう結城を追いかけ、立ち塞がる志郎。「ライダーマンとしての能力で、カマクビカメに勝てると思っているのか!」説得しても聞く耳持たない結城が志郎に挑みかかるも、改造人間としての基礎能力に差がありすぎて全く歯が立たない。「少しは頭を冷やせ!」志郎は結城の顔面を殴り飛ばし、変身して幸恵の救出へ向かった。
デストロンの処刑場に乱入したV3。カマクビカメと対峙するその場に、ライダーマンも現れた。再びV3の邪魔をするのかと思われたが、ライダーマンはカマクビカメの相手をV3に任せ、自身は幸恵の救出と安全確保に回った。カマクビカメは長く伸びる首を駆使してV3を翻弄し、さらにはV3を自分の体内に呑み込んで見せたものの、体内のV3が力任せに内側から脱出したことでカマクビカメの身体は爆散した。
ライダーマンに手を差し出すV3。しかし、ライダーマンはその手を握り返すことなく、幸恵をV3にあずけて去って行くのだった。
解説
さて、前回から登場のライダーマン。ここから先のキーパーソンでもありますので、そのキャラクターを少し深掘りしてみましょう。
平成・令和シリーズでは当たり前になった、番組単位での2号ライダーの先駆けとライダーマンを位置づける人もいますね。ただ、平成・令和の2号ライダー達はだいたい主役ライダーと同格か、あるいは格上という位置付けであることが多いのですが、ライダーマンは明らかにV3より格下の位置づけという意味で、性質はかなり違いますね。
そもそも、ほぼ完全スペックの改造人間であり、「元の姿で残っているのは頭脳だけ」というV3に比べ、ライダーマンは基本的に改造されているのは右腕のみであり、それ以外の部位は強化服を着ているだけでほぼ生身です。従って単純な戦闘能力ではV3に大きく後れを取っており、戦闘員相手ならともかく、怪人相手にはほとんど太刀打ちできないレベルです。今回、志郎とタイマンを張る場面がありますが、ほとんど子供扱いです。
結城丈二は元々孤児であり、デストロン首領に拾われたというのが公式設定ですが、このあたりは色々な矛盾をはらみそうな設定ですね。そもそもデストロン自体はかなり新しい組織であり(結成から1年未満)、デストロン結成と同時期に拾われたとしても結城丈二は年齢的に「孤児」ではあり得ないはずです。なので、孤児の頃に首領に引き取られたのだとしたら、それは首領がまだ「ショッカー首領」だった時期か、あるいはショッカーのような秘密結社を組織する以前から、結城を引き取って将来の手駒として育てていたということでしょうか。
その結城、科学者というには少々頭に血が上りやすい性格というか、冷静に状況を判断する能力に欠けているきらいがあります。カマクビカメ相手にまともに太刀打ちできていないのは明かなのに、それでもライダーマンの力を過信し、V3の助力を拒むばかりか邪魔者扱いする始末。助手達を殺された恨みからとという見方もあるでしょうが、後に『仮面ライダーストロンガー』で客演した際にも、デルザーを自分の獲物と固執し城茂に襲いかかる狼藉を働いているところを見ると、元々の性格なのでしょう。もっとも、この熱い性格だからこそ、デストロンでの人望も厚かったということなのかもしれません。この時は志郎同様フルスペックの改造人間である城茂相手にも互角に立ち回っているので、戦闘能力をかなり磨き上げたようですね。
また、些末なことではありますが、助手達の墓前に手を合わせる際に、仏教式の合掌ではなく、キリスト教式の両手を組んで握りしめる手の結び方をしていたところを見ると、クリスチャンという設定なのかもしれません。
いずれにせよ、復讐心に駆られ、変わり果てた肉体を嘆きながらも、打倒ヨロイ元帥に固執するその姿は、ある意味で本郷猛を違う角度から投射した姿とも言え、本番組の終盤のストーリーに深みを与えることとなり、中盤以降低調を続けた視聴率を回復させる立役者となりました。間違いなく「V3の引き立て役」として投入されたキャラクターなのですが、ままならない戦闘能力を抱えながらも必死にもがくその姿は、当時の子供達が成長すると再評価され、他の主役ライダー達にも決して引けを取らない人気を得るに至っています。
脚本:伊上勝
監督:内田一作