あらすじ
世界征服を企む悪の組織ブラックサタン。奇械人ガンガル率いるブラックサタンの一団は、三河湾を航行する観光ホバークラフトを輸送船としてジャックした。しかし、このホバークラフトのシージャックは、船内に添乗員として忍び込んでいた「電波人間タックル」に変身する女性・岬ユリ子と、船外からバイクで追跡してきた城茂を名乗る二人に妨害される。
報告を受けた大幹部タイタンは、既に正体を認知しているタックルをホテルの部屋で毒花の罠にかけて捕獲させる。しかし、連れ出そうとする戦闘員の前に城茂が現れて失敗。逃げ帰ってきた戦闘員とガンガルの前に現れたのは、「仮面ライダーストロンガー」を名乗る謎の戦士だった。
思わぬ妨害を受けたタイタンはガンガルに、毒ガスをまき散らす花を大量に流通させて人間達を虐殺する作戦の決行を指示。ユリ子が花屋の正体がガンガルであることに気づいて、これを阻止しようとするも返り討ちに遭い、電波塔に逆さづりにされた。
そこに表れた城茂。いきり立つガンガルの前で、彼は見得を切ってポーズを取り、仮面ライダーストロンガーに変身した。城茂こそが、仮面ライダーストロンガーであったのだ。ストロンガーは必殺の「ストロンガー電キック」でガンガルを撃破した。
悪の組織ブラックサタンの前に突如として立ち塞がった、ストロンガーこと城茂と、タックルこと岬ユリ子。この二人は一体、何者なのであろうか。
解説
というわけで、「仮面ライダーストロンガー」の第1話です。第1話だからというのもあり、注目すべきポイントは多々あります。一つずつ見ていきましょう。
ブラックサタンと奇械人
今回、ライダーの敵となる悪の組織ブラックサタン。その怪人は「奇械人(きっかいじん)」と呼ばれています。多分、名前のイメージとしては「奇怪」&「機械」でしょう。実際、奇械人達は、今回のガンガルもそうですが、モチーフとなる動物を機械的に表現したような風体をしているのが多いです。
デストロンの機械合成怪人と同じ?と思われるかも知れませんが、デストロンの機械合成怪人は動物モチーフの怪人に武器として機械を持たせたものであり、根本的に違ってますね。
名前の付け方について、今ひとつ統一感がないのも特徴で、今回のガンガルのようにモチーフとなる動物の名前をもじって怪人名にすることもあれば、前作「仮面ライダーアマゾン」の獣人のように、モチーフとなる動物の名前の後に「奇械人」と着けただけのものも存在します。「サソリ奇械人」みたいな感じで。
大幹部タイタンと浜田晃
タイタンは大幹部としてはGODのアポロガイストと同様に、市中で活動するための人間態を持っていますが、その人間態を演じているのは浜田晃。個人的にはこの浜田晃という俳優は、仮面ライダーシリーズにおける裏VIP的な存在だと勝手に思ってます。
本作におけるタイタンでの熱演はもとより、彼は後に平成シリーズの「仮面ライダービルド」においても悪役としてレギュラー出演を果たしているのです。昭和シリーズと平成シリーズ両方で悪役でレギュラー出演したという俳優を私は他に知りません。
ちなみにスポット出演でも、昭和で「仮面ライダーX」、平成で「仮面ライダーオーズ」に登場しています。
なおタイタンとしての浜田晃は、一部タイタンの中に入って演技していたこともあるそうです。
時代劇のノリ
プロデューサーの平山亨はもともとが時代劇畑の人物だったこともあって、仮面ライダーにおける登場人物の位置づけには時代劇のノウハウが持ち込まれていると言います。ヒーロー番組の体で作った時代劇、それが「仮面ライダー」だという趣旨のことも著書で書いてました。しかし本作「仮面ライダーストロンガー」は、もうその時代劇的な部分を隠そうともせず、演出のノリからして時代劇感満載です。
口笛を吹きながらも姿をなかなか見せず、ひたすら引きを作る主人公の登場。そしてその主人公・城茂の台詞回しが、いちいち時代劇的な見栄を切るような言い回しです。極めつけは変身後のストロンガーの口上。
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ! 俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」
もうね、まさに「こちらに御座すお方をどなたと心得る!」「その方、余の顔を忘れたか」「隠密同心心得の条」的な時代劇のノリですよ。私のような時代劇全盛期を見てきた世代にとってはノスタルジックな気分をかきたてられること請け合いなのです。
エンディング
エンディング曲「今日も戦うストロンガー」ですが、シリーズ初の男女デュエット曲となっています。クレジットでは「水木一郎・堀江美都子」となっているのですが、実際には水木一郎ではなくて子門真人が歌っています。それも今回の第1話と第2話だけで、第3話以降はちゃんと水木・堀江バージョンになります。
どうも詳細はわからないのですが、複雑な大人の事情があったようですね…
脚本:伊上勝
監督:塚田正煕