十面鬼!神か?悪魔か?(『仮面ライダーアマゾン』第2話)

あらすじ

夜の街中で飼い犬を散歩させていた女性・マサ子は、踏切で男が電車に跳ねられるのを目撃する。驚いて近づいてみると、男は無事だったが、明らかに様子がおかしい。上半身は裸で、うなりような声を上げてあからさまに自分を警戒して威嚇している。どう見ても人間だが、その様子はまるで獣のようだった。マサ子は彼を、親友りつ子の弟・まさひこが話していた「アマゾン」だと確信し、傷の手当てを施したうえで、近くの電話ボックスでまさひこを呼び出した。

しかし、まさひこが到着すると既にアマゾンはゲドンの獣人吸血コウモリの襲撃を受け、戦闘中だった。変身して吸血コウモリを退けるが、マサ子は獣人吸血コウモリのツメを受け、病院へ搬送、そのまま入院となった。毒のような症状に苦しむマサ子だが、医学的には何の異常も無く、医者にも打つ手が無い。医者にも見放されて悲しみに沈むマサ子の母の姿に、りつ子はアマゾンへの恨みを募らせていた。自分たちがこんな目に遭うのはアマゾンのせいだと。マサ子の様子を見に来たものりつ子に追い返されたアマゾンは、自身の知識で薬を調合した薬を、まさひこに密かに手渡した。

林の中を移動するジューシャ達の後を追いかけるアマゾンだったが、それは彼を誘き出す罠。海岸でアマゾンは獣人吸血コウモリに再び襲撃される。変身して応戦するアマゾン。

マサ子の病室ではマサ子にアマゾンの薬を飲ませようとするまさひこと、アマゾンを信用できず薬を捨てようとするりつ子が喧嘩。しかし、マサ子はりつ子の手から薬を奪い、一気にあおった。「あの人は悪い人じゃ無い。私を化け物から救ってくれた」

アマゾンと吸血コウモリの戦いは、アマゾンが腕のカッターで吸血コウモリに致命傷を負わせ、吸血コウモリはアジトへ撤退。激怒する十面鬼にそのまま処刑された。

アマゾンの薬を飲んだマサ子も、しばらくの間苦しんだものの、無事回復を果たした。

解説

ゲドンとライダーの関係性

ゲドンという組織には、それまでの歴代組織とは特徴的に異なる部分が結構見られます。

これまでの組織は、基本的には世界征服や日本壊滅を目的として動いています。それに敵対する仮面ライダー達は、ひと言で言えば「邪魔者」です。目的の邪魔さえしてこなければ、基本的には相手をする必要の無い存在なのですが、毎回ことごとく邪魔してくるのでいつも衝突するわけです。

しかし、ゲドンとアマゾンライダーの関係は少し違います。

ゲドンの目的が世界征服であることは同じですが、ゲドンは世界征服の手段として、インカの古代科学が開発した超エネルギーに固執しています。その秘密の鍵となるのが、十面鬼の持つガガの腕輪と、バゴーがアマゾンの左腕に移植したギギの腕輪。つまり、ゲドンはアマゾンからギギの腕輪を奪う必要があるわけで、ゲドンと十面鬼にとってアマゾンライダーは単なる邪魔者ではなく、「斃すべきターゲット」なのです。本エピソードではそのようなゲドンの背景を、冒頭部分で十面鬼本人が長々と説明してくれます。

なので、ゲドンの作戦行動の目的は、そのほとんどがアマゾンの抹殺になっていて、人間社会に直接ダメージを与えるようなテロ活動などはほとんど行いません。せいぜい、獣人の食料として人間を攫う程度です。

そしてアマゾン自身は、自分が何故ゲドンに狙われているのかがわからない。そのあたりの秘密を知るバゴーも高坂教授もすでにいない。この構図の妙も、本作序盤の魅力ですね。

十面鬼

そのゲドンの首領・十面鬼ですが、これまでの歴代組織の首領や大幹部と比べても、かなり「イカれた奴」として描写されている感があります。

任務に失敗した部下を容赦なく処刑するあたりはまあ、よくあるレベルではありますが、こいつはその際に実に楽しそうに高笑いするんですよ。これまで、怒りにまかせて部下を処断するような首領や幹部はいましたが、さすがに十面鬼のように部下を処刑して大笑いするような奴はいません。まさに狂気を感じさせます。

ちなみに下半身の人面岩に埋まっている9つの顔は、それぞれ別個に意思を持っているようで、今回は獣人吸血コウモリを処刑しようとする本体を、人面岩の顔が諫めるというシーンがあります。

戦闘員?赤ジューシャ

そして、ゲドンがこれまでの組織と異なる点のもうひとつは、戦闘員です。

ゲドンの戦闘員とも言うべき「ジューシャ(従者)」達は、女性です。そして、どちらかというと戦闘員よりは諜報員と言った方がよく、直接アマゾンと矛を交えることはほとんどありません。今回のようにアマゾンを誘き出したり、その動向を監視したりなど、情報収集と攪乱が主な任務となります。それでもさすがに普通の人間ではないようで、成人男性程度は軽くあしらうくらいの身体能力はあるようです。

そして、ゲドンの内部では獣人達よりも地位が高いと思わせる描写もちらほら見られます。

この「ジューシャ」と呼ばれる下級構成員は、ゲドンの後に登場するガランダー帝国にも同じ名前で存在しますが、ガランダーのそれは男性で、戦闘員的な性格がより強くなります。両者を区別するため、ゲドンのジューシャを「赤ジューシャ」、ガランダーのそれを「黒ジューシャ」と呼んだりします。

大門勲と八手三郎

本作の冒頭4エピソードで脚本を担当している「大門勲」ですが、これは特定の人物を表す名前ではないそうです。その実体は、本職は監督である長石多可男と平山公夫、そしてプロデューサーの平山亨の三名。彼らが交代で初期4エピソードの脚本を作っていたと言うことですね。

仮面ライダーシリーズというか、東映のテレビ作品ではわりとこういう、特定の人物ではなくスタッフ間で共有している名義みたいなものがいくつかあります。

一番有名なのは「八手三郎」(やつでさぶろう、または、はってさぶろう)でしょう。現在ではスーパー戦隊シリーズの原作者としてクレジットされているのが有名ですが、特定の実在人物のペンネームではありません。八手三郎名義の歴史はかなり古く、本作でもエンディングテーマ「アマゾンダダダ」の作詞者としてクレジットされています。元々は平山亨のペンネームであり、彼の退職後に共同名義として使われるようになったとのこと。平山が東映社外の作品に関わることになったさいに、さすがに本名をクレジットすることはできないということで作られたのがそもそもの始まりなのだとか。なので、仮面ライダーシリーズに限って言えば、八手三郎はほぼ平山亨と同義と言えます。平山亨は他に「田中守」という名義も使っていて、「ぼくのライダーマン」を作詞してたりしますね。

ちょっと目先の変わったところだと、女児向けアニメの「プリキュア」シリーズの原作者とされている「東堂いずみ」も同様で、特定の人物のペンネームではなかったりします。

脚本:大門勲
監督:塚田正煕

第1話「人か野獣か?!密林から来た凄い奴!」第3話「強くてハダカで速い奴!」

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