あらすじ
敬介と藤兵衛達は、ついに活動を始めたキングダークとGODの動向を探っていた。しかし、その捜索活動の中で、藤兵衛とチコ達が、GOD悪人軍団・サソリジェロニモ・ジュニアの手によって人質として捕まってしまった。
サソリジェロニモ・ジュニアは人質を餌に敬介を多摩丘陵に呼び出し、設計図の最後の一枚の譲渡を受けた。しかし人質解放の約束は果たされず、サソリジェロニモ・ジュニアは敬介を襲う。敬介はXライダーに変身して立ち向かうも、クルーザーで突進するところにサソリジェロニモ・ジュニアの槍投擲の直撃をくらい、爆散した。
しかし、爆死は敬介の演技だった。藤兵衛達が連行されるのを尾行し、アジトの場所を突き止めて内部に潜入する。が、アジトに既にキングダークの姿はなく、キングダークは藤兵衛達の前にその巨大な姿を現した。再びXライダーに変身してキングダークに挑みかかるが、圧倒的な体格差とパワー差の前に為す術もない。正面から戦っても勝てないとみたXライダーは、クルーザーごとキングダークの口部から体内に侵入した。
キングダークの体内で戦闘工作員を排除しつつ、コントロールルームに向かうと、そこでは頭部が石灰化したような異様な風体の男がXライダーを出迎えた。彼の名は呪博士。「悪魔の天才」の異名を取るGODの頭目であり、敬介の父親の親友であったという。世界は我が物と豪語する呪博士を斃そうとするXライダーの胸部を、不意に現れたサソリジェロニモ・ジュニアの槍が貫通した。それでも苦痛に悶絶しながら、ライドルホイップを引き抜いてサソリジェロニモ・ジュニアと呪博士を突き刺した。
キングダークと一体化していた呪博士の死により、キングダークは大爆発。その体内にいたXライダーも巻き込まれ、藤兵衛とチコ達は失意の中COLへと戻ってきた。敬介を失った悲しみに打ちひしがれるなか、藤兵衛はカウンターに一通の手紙が置かれているのを見付けた。その差出人は…
敬介は生きていた。GODを壊滅させた敬介は、先輩の仮面ライダー達と同様、新しい戦いへ向けて旅立っていったのだった。
解説
藤兵衛と、彼の運転するジープに同乗するチコとマコ。荷台に載っていたり、シートベルトを着用していなかったりするあたりが時代を感じさせますね。当時はまだ、クルマを運転する際にシートベルトの着用義務はありませんでした。なんならシートベルトを備えていないクルマさえもあったと言います。現代では考えられないことですよね。実際シートベルトが義務化されたのは管理人が小学生くらいの頃だったと記憶してます。まず運転席から、その後助手席にも適用拡大され、その後だいぶん遅れて後部座席についても義務化されるようになりました。今時の若い人たちはシートベルト未着用が当たり前だった時代が存在していたことに驚くかもしれません。
さて今回で最終回と言うことで、キングダークを操っていたGODのボスの存在がついにお目見えするわけです。その名を「呪博士」。前から散々述べているとおり、謎の多い人物です。そもそも、東西両大国が日本を抹殺するために組織したGODの首領を、何故彼のようないち個人が率いているのか。敬介の父親である啓太郎博士の親友でもあるというから人間なのでしょうが、どう見ても人間離れしているその異様な風体。本作のストーリーを吟味していく上で、必ず大きな壁として立ち塞がる謎がこの呪博士でしょう。
そしてその呪博士とともに最終回を彩るのは悪人軍団・サソリジェロニモ・ジュニア。まさかの過去の怪人の使い回しです。モチーフのネタ切れか、あるいは番組打ち切り→次番組の準備で新しい怪人の着ぐるみを用意する余裕が無かったのか、真実はわかりませんが、こいつは、悪人ながら約束は守る紳士的な怪人だった父親と違って、自ら約束を反故にする卑怯者でした。
そして、最後の最後で物議を醸した有名なシーン。敬介が藤兵衛に当てた、旅立ちの挨拶の手紙。内容はともかく、問題は最後の署名にあります。
「神啓介」
と書かれてあるのです。もちろん正しくは「神敬介」です。番組のオープニングクレジットでも「敬介」表記ですし。ただ、彼の父親は「啓太郎」なので、父の名前の一字をもらったと考えれば、もしかすると本当は「啓介」が正しかったのかも知れない…そんな憶測が憶測を呼ぶ、謎深まる曰く付きのシーンなわけです。
…まあ実際のところ、本作『仮面ライダーX』はスタッフの中だるみ感が凄い作品ではあります。冒頭ナレーションの微妙におかしい日本語、最後まで固定できなかった水城涼子のキャラクター、何食わぬ顔で変えられていたアポロガイストを手術した博士の名前、マコ役女優のオープニングでのミスクレジットと、至る所にスタッフの「弛み」が見られるのが本作です。この最後の「神啓介」事件は、ある意味その象徴ですね。主人公の名前すらまともに管理できておらんのかと。
35話で番組打ち切りの憂き目に遭ったのも、残当と言えるかもしれません。そして番組はシリーズ第4作『仮面ライダーアマゾン』にバトンタッチします。
脚本:伊上勝
監督:折田至