あらすじ
とある青年画家が、自らの血を絵の具に混ぜ込んで描く、不気味な黒猫の絵。その絵が届けられた家では、夜に絵から飛び出した黒猫の怪人が、家人を襲う。猛の家にもその絵は届けられ、首をかしげる猛の目の前で、怪人が姿を現した。その正体は、黒猫の絵を通して自由に遠隔移動する能力を持つゲルショッカーの合成改造人間、ネコヤモリだった。
その場はネコヤモリを退けた猛だったが、ナオキの友達であるサトルが、画家の兄が血を絵の具に混ぜて変な黒猫の絵ばかり描いていると話していたのを思い出し、サトルの兄がゲルショッカーの手先ではないかと疑いを持つ。果たして、その家を訪れると、サトルの兄の正体は当のネコヤモリ本人であった。ライダーに変身してネコヤモリに戦いを挑む猛だったが、ネコヤモリはそこそこに戦ってその場を撤退する。
一方その頃、西熱海ホテルでは、アジアの科学者達が一堂に会した平和会議が開催されるところだった。FBIの特命を受け、滝が現地で警備に当たっていたその議場に、ホテルマンが黒猫の絵を持ち込む。とくに不審な点も見当たらず、持ち込みを認める滝だったが、これこそがゲルショッカーの計画する「F作戦」の本丸であった。
ネコヤモリはライダー隊本部に持ち込まれた黒猫の絵から姿を表し襲撃。駆けつけた猛と戦いになるが、戦いもそこそこに絵の中に引っ込んでしまう。この襲撃は、猛をライダー隊本部に誘き出す囮だった。誘き出しに成功したネコヤモリは、黒猫の絵を渡って西熱海ホテルへ移動、平和会議を襲撃した。
西熱海ホテルと80キロ離れたライダー隊本部からは、ブラック将軍の計算で、仮面ライダーでも移動に20分はかかる。その間に、平和会議に集まった科学者達の拉致を完了してしまう作戦だったが…仮面ライダーはものの数分で西熱海ホテルにその姿を現した。
「俺はいつまでも同じ力ではない、ネコヤモリ!」
ライダーとネコヤモリの死闘。ライダー返し、ライダーパンチにも耐えるタフさを見せたネコヤモリだったが、ヤモリ吸盤からライダーのエネルギーを吸い取ろうとするも、滝の助けもあって失敗。ライダーキックの直撃を食らい、ネコヤモリは倒れた。その姿は、元のサトルの兄の姿に戻っていた。
解説
昭和1期、2期シリーズの名物、「怪談シリーズ」ですね。夏期になると怪談風の要素が盛り込まれたエピソードが放映される、当時の恒例行事。この『仮面ライダー』第88話がその始まりと言われています。
当サイトでは、『仮面ライダーX』の第17話から始まる怪談シリーズの紹介が先になりましたが、『仮面ライダーX』第18話でも、猫がネタになってましたね。黒猫、化け猫は怪談の定番ですからね。もっとも、『仮面ライダーX』第18話の方は、シナリオが破綻しまくっていて怪談もクソもありゃしませんでしたが、こちらの方はそこそこしっかりした作劇になっています。
絵を通じて自在に移動する怪人という設定も怪談らしくて斬新ですし、その能力を利用して、ライダーを作戦の本命から離れた場所に誘き出し、自分だけさっさと現場へ移動して作戦を決行するというのも、ゲルショッカーにしては緻密に練られた作戦です。
もっとも、その緻密な作戦も、「俺はいつまでも同じ力ではない!」というご都合主義の元に一刀両断にされてしまうのですが…。ある意味、このご都合主義がここまで緻密に練られてきたシナリオをすべてぶち壊しにしてしまったとも言える…。ここをきちんと収めることができていれば、傑作エピソードにもなり得たろうに、少し残念です。
ちなみに少し真面目に考察すると、ブラック将軍の計算どおり80キロ離れたところへ20分で到達するには、時速240km/hが必要です。…最高時速500km/hの新サイクロンなら10分足らずの計算です。ちなみに最高時速400km/hの旧サイクロンでも20分はかかりませんね。ブラック将軍の計算は何を根拠にした物だったのか。まあ、常に最高時速を出して走れる物でもないでしょうから、現実的にはそこそこ妥当な見積もりなのかもしれませんが、結果としてライダーは彼らの予測を遙かに上回る速さで移動を終えているわけでして、おそらくフルタイム最高速でぶっちぎってきたんでしょうね。
脚本:島田真之
監督:塚田正煕