あらすじ
ツバサ大僧正に代わる新しい日本支部大幹部として着任したヨロイ元帥。彼は、人間を溶かす特殊な溶解液を備える新しい改造人間・ガルマジロンの能力で、地球上の都市の無抵抗占領を計画。そのための邪魔者であるV3の始末に乗り出した。
ヨロイ元帥は、アジトから脱走した奴隷・山下を餌として泳がせ、さらには偽の暗号電文をライダー隊本部の志郎に傍受させ、誘き出した。志郎は、精神病院職員を装ったデストロンが警察署へ駆け込んだ山下を連れ出す現場に遭遇。デストロンの車両を追跡し、山下の救出に成功した。救出されたものの、負傷が深い山下はそのまま入院。再度のデストロンの襲来を警戒し、志郎は山下の病床に夜を徹して付き添う。
その夜、病室に忍び寄る人影があった。志郎が引っ捕らえたその人影は、志郎のレーサー仲間で、レーシングの修行で海外へ出ていた親友の高木だった。久方ぶりの再会を喜び合う二人。しかし、同時にデストロンが病院を襲撃。志郎と高木が戦闘員の相手をしている間に、山下とその家族はデストロンに連れ去られた。高木と共にデストロンの車両を追い、アジトに突入する。そこで志郎はヨロイ元帥と初対面を果たす。
「お前の相手は…」と呟くヨロイ元帥の視線の先には高木。高木は、志郎の目の前でガルマジロンの正体を現した。アジトで落とし穴に落とされ、地下牢に閉じ込められた志郎の元に、再び高木として訪れた彼は、志郎にデストロンに加わるよう説得するが、志郎は断固拒絶。
志郎は高木をデストロンから足抜けさせようと逆に説得するが、ヨロイ元帥の影におびえて正気を失った高木は、ガルマジロンとしてV3に変身した志郎と決闘へ。激しい戦いの末、ガルマジロンにV3回転フルキックを浴びせて勝利したV3。
高木の姿に戻って事切れた彼の亡骸を抱き上げ、非道のデストロンと戦う決意を新たにするV3であった。
解説
前作の脚本リメイクシリーズ。今回の元ネタは、『仮面ライダー』第3話「怪人さそり男」。が、大幹部交代という大きなイベントと両立させるため、元ネタの脚本にはこれまでと比べるとかなり手が入っている印象です。
元ネタと違う点は大きく2点。元ネタでは脱走者の伊東は結局さそり男に殺されますが、山下は最後まで生き残っています。また、元ネタでは、親友の早瀬は本郷猛に対する劣等感をこじらせて、完全に彼を憎むようになってしまってますが、今回の高木はまだ志郎に対する友情を残しており、志郎をデストロンに勧誘しようとし、また志郎の逆説得にも心を揺さぶられている風に描かれています。結局、ヨロイ元帥による脅しに負けてガルマジロンとして志郎と闘うことになるのですが、最後には一瞬正気を取り戻したように志郎の名を呼び、事切れてます。これはヨロイ元帥の邪悪さを強く印象づけるための変更だったのかも知れないですね。
さて、そのヨロイ元帥初登場となった今回。後にはライダーマンの宿敵としてその悪名を轟かせるキャラクターです。演じるのは中村文弥。アクションを担当していた大野剣友会のスタントマンの一人で、前作『仮面ライダー』で主に2号ライダーの中に入って演じていた人物でもあります。大野剣友会のメンバーが役者として重要キャラクターを演じるのは、ちょうど先代大幹部のツバサ大僧正を演じていた富士野幸夫が初で、中村は2人目です。しかし、その後は『仮面ライダースーパー1』で河原崎洋央が鬼火司令を演じるまで待たねばならず、またそれが最後になってしまいます。
今回の怪人・ガルマジロンはアルマジロがモチーフの怪人。アルマジロは昭和シリーズで比較的頻繁に怪人のモチーフに起用される動物ですが、『V3』においては、第7話のナイフアルマジロに続いて二度目の起用になりますね。よくよく考えると、バーナーコウモリと死人コウモリも同じコウモリモチーフですか。他にもあるかな? 同じ番組内で同じモチーフが二度使われるというのは、私の記憶にある限りでは『V3』意外ではなかったように思います。
また、これまでキバ一族、ツバサ軍団と続いてた結託部族の怪人達は、改造人間と言うよりは呪術的に生まれた文字通りの怪人、と言ったイメージで、改造手術のシーンなどは描かれていませんが、今回のガルマジロンは改造手術のシーンが描かれる、久しぶりの正当派改造人間です。ドクトルGの死後、外部の邪悪部族と結託することで組織を保ってきたデストロン。ヨロイ元帥もそんな外部部族の出身ではありますが、彼の率いる「ヨロイ一族」はキバ一族やツバサ軍団とはちょっと位置づけが違うのかも知れません。
実際、ヨロイ元帥に交代してからは、デストロンのオカルティックな雰囲気は一掃され、再び初期のデストロンに近いイメージになっています。ヨロイ一族は、ショッカーと結託してゲルショッカー結成に加わったゲルダム団に近い位置づけな気がします。
脚本:海堂肇
監督:折田至