あらすじ
ショッカーの科学陣が生み出した新しい改造人間・さそり男。そのさそり男が操る恐怖の人食いサソリの人体実験で偶然生き残った老人・伊藤。本郷猛はその伊藤をショッカーから助け出し、館山シーサイドホテルの客室に保護する。
伊藤を警護しながらショッカーの襲撃を警戒する猛の元を、ルリ子に連れられて親友・早瀬五郎が訪問する。心強い友の協力に勇気づけられる猛。しかし、ホテルはショッカーに襲撃され、猛と早瀬が部屋を開けてる間に伊藤は殺され、ルリ子はショッカーに連れ去られてしまう。
その後を尾行してショッカーのアジトを突き止め、ルリ子の救出に飛び込む二人。しかし、ショッカーを指揮していたさそり男は、意外な形で姿を現すのだった。
解説
「人食い」?
冒頭から、ショッカーによる「人食いサソリ」の残虐な人体実験。強制労働で疲弊した囚人達を解き放ち、10分以内に砂漠地帯を越えれば自由の身とするという約束だったが、結局砂漠を越えられた者ははおらず、伊藤を残して人食いサソリに毒液を吹き付けられ殺されてしまう。
…
……
人食いサソリ?
いや、食ってない。食ってないよね? 毒液を吹き付けて殺しただけだよね? 人食いサソリじゃ無いよねこれ?
ショッカーという組織
旧1号編では、戦闘員が覆面ではなく顔面ペイントであるというのもありますが、戦闘員に女性が存在しているのも大きな特徴です。今回も、館山シーサイドホテル襲撃の先陣を切っているのは女戦闘員達でした。
旧2号編以降は、シリーズとしても「仮面ライダーアマゾン」に登場する赤ジューシャまで女性戦闘員は登場せず、またそれ以降も登場はなくなるのですが、何か女性戦闘員だと変な不都合でもあったのでしょうか。
アジトを襲撃した本郷が戦闘員に対して「戦闘員が行動するときは、必ず指揮を執る幹部がいるはずだ!」と詰め寄るシーンがありますが、ここにショッカーの組織構造の一端が見て取れます。
ショッカーという組織も、話が進むにつれて様変わりしていきますが、この頃のショッカーは、頂点に首領が居て、その下に幹部の怪人、そして怪人の指揮下で作戦遂行にあたる戦闘員という組織構造。この頃はまだ戦闘員も直接首領と言葉を交わしたりと、地位的にもわりと高い位置にあったようです。ショッカーの戦闘員というと単なる斬られ役のザコというイメージですが、冒頭の人体実験時の首領の言葉からも、ショッカー内で戦闘員に取り立てられるのは名誉なこととされていることがわかります。
これが後に大幹部であるゾル大佐が登場すると、首領が怪人や戦闘員に直接指示することはほぼなくなり、大幹部が首領の名代として怪人や戦闘員への指示を行うようになります。この頃になると戦闘員は文字通り斬られ役のザコそのもので、相対的な地位の低下がうかがえます。
最後には、さそり男としての正体を現した早瀬と、逡巡しながら戦うこととなった猛。「早瀬!よせ、目を覚ませ!」と必死に呼びかけるも、さそり男は無視。自分と同類の改造人間でもある、かつての親友と戦わねばならぬ運命の苛酷さ。そんな本郷猛の悲哀漂うエピソードとなりました。
脚本:伊上勝
監督:竹本弘一