惑星用改造人間の大変身(『仮面ライダースーパー1』第1話)

あらすじ

アメリカ・国際宇宙開発研究所では、21世紀に予想される人口爆発に伴う、食料不足など、数々の難題の解決を宇宙に求め、惑星「S1」に宇宙開発の前線基地建設を決定。そのため、予期せぬ障害にも対応できる能力を備えた、惑星開発用改造人間「スーパー1」の研究が進められていた。

幼い頃に、国際宇宙開発研究所の科学者だった両親を事故で失い、孤児として所長のヘンリー博士を親代わりに育った研究所員・沖一也が、改造人間第1号に志願。ヘンリーの執刀により改造手術が施され、一也は改造人間・コードネーム「スーパー1」として生まれ変わった。

しかし、帝王テラーマクロ率いる闇の王国「ドグマ」がヘンリーを拉致。ドグマは、無能な人間の粛正することで、優秀な人間達によるユートピアの建設を掲げていた。スーパー1の提供をヘンリーに迫るドグマの幹部・メガール将軍。

メガール将軍は頑として提供を受け容れないヘンリーに6時間の猶予を与え釈放するが、ヘンリーは一也をドグマの魔の手から脱出させることを優先する。6時間経過しても恭順の意を見せないヘンリーに、ドグマは怪人ファイヤーコング率いる一団で研究所を襲撃。変身司令コンピューターは破壊され、独力で変身できない一也は怪人相手に為す術もない。

ヘンリーも殺され、ドグマは用済みとなった研究所の建物を爆破してしまう。一也もまた、爆発に巻き込まれ死んだかと思われたが…一也は爆風の中、無意識に変身を遂げ生き延びていた。

絶体絶命の危機を脱した一也。ドグマ打倒を胸に、スーパー1の戦いが始まる。

解説

というわけで、スーパー1第1話。前作の第1話もそうですが、第2期シリーズは第1話の描写が非常に濃密で好きです。

スーパー1を誕生させた、アメリカの国際宇宙開発研究所。一部、スーパー1はNASAで開発されたとする資料もあるようですが、NASAの正式名称は「航空宇宙局」であり、これは明確に誤りです。NASAを念頭に置いてはいるでしょうが、明らかに架空の別組織です。

まあ、アメリカの組織なのに所員がヘンリー以外のきなみ日本人なのはご愛敬www。それでも、ヘンリー博士がドグマに拉致されるシーンでは、英語の標識を用意したり、アメ車っぽいゴツい車を使うなど、それっぽい雰囲気を出そうと頑張ってます。

改造手術の直後、スーパー1の能力テストが行われており、そこでスーパー1の主武装「ファイブハンド」のお披露目がされています。戦闘用のスーパーハンド、重作業用のパワーハンド、電源代わりのエレキハンド、加工用?の冷熱ハンド、偵察用のレーダーハンドと、一応「宇宙開発」にあれば便利そうだなという機能は揃ってますね。

中でも驚くべきはエレキハンドでしょう。モーターを回したり、電灯をともしたりと、要するに電源代わりになるという便利アイテムなのですが、最大で3億ボルトというその超高出力なエネルギーはどこから捻出しているのでしょう。エネルギー保存則をガン無視しまくったウルトラチートアイテムですね。

それにしても3億ボルトですよ。やれ、某怪人が操る電気が何万ボルトだなんだ、っていう話は本サイトでも散々してきました。電気系怪人では、ショッカーのエイキングが100万ボルトでトップ。「改造電気人間」を名乗る仮面ライダーストロンガーの必殺技「電キック」が10万ボルト。もうね、これらと比べると0が2つ3つ違うんですよ。文字通りの桁違い。そういえば、仮面ライダーV3はスペック上、100万ボルトまで耐えることができるそうですよ。…うん、エレキハンドの前にはV3も瞬時に消し炭ですね…

今回、スーパー1の専用マシン「Vマシン」もお披露目されます。ベースマシンは言わずと知れたハーレーダビッドソン。それまでのマシンは、ベースマシンに色々なガワを取り付けることでスーパーマシンらしい造形を作り上げてましたが、今回はあまり派手なデコレーションは無く、ほとんどハーレーに塗装を施しただけのようですね。「新時代の1号ライダー」にふさわしい重厚感のあるマシンとなってますが、残念ながらこのVマシンがバイクアクションで活躍するシーンは、ほぼありません。当然と言えば当然ですね…ハーレーでバイクアクションなんかできるわけがない。Vマシンはもっぱら移動専用として使われ、なんならスーパー1よりも一也が乗っていることの方が多い感じすらします。で、アクションに使えないのが問題視されたのか、後にセカンドマシンとして「ブルーバージョン」が何の説明も無く唐突に登場するのですが。

ちなみにこのVマシンも相当なチートアイテムで、モードを変更すると「Vジェット」に変型し、この時の最高時速は1340km/h。これは地球上での音速を超えています。宇宙活動を念頭に置いているのでしょうが、地球上、それも日本国内を走行するにはとんでもないオーバースペックと言えましょう。

さて、ここで出演の俳優達について少し。

主人公・沖一也を演じるのは高杉俊价。前作の村上弘明同様、本作が俳優デビュー作となりますが、元は自衛隊のレンジャーだったという異例の経歴の持ち主でもあります。レンジャーは陸上自衛隊で特殊任務の訓練を受けた、言わば精鋭中の精鋭といったところ。そのためか、彼の運動能力は非常に高いようで、劇中でもバク転や跳び箱の前方倒立回転跳びを軽々とこなして見せています。

ヘンリー博士を演じているのは大月ウルフという俳優。彼は日本生まれの日本育ちで、国籍も日本ですが、スウェーデン人とのハーフだそうです。その容姿からか、脇役の外国人役が多かったようですが、当然ながら流暢な日本語を使いこなしてます。ピアニストのフジコ・ヘミングが実姉で、日本人の母親もピアニストだそう。「大月ウルフ」は芸名で、本名はスウェーデン人的なものですね。仮面ライダーシリーズでは「ストロンガー」でも単発出演しているほか、平成シリーズの「ドライブ」にも出演していました。

第1話ではまだまだレギュラー出演陣はほとんど登場していませんが、今後その都度紹介していこうと思います。

脚本:江連卓
監督:山田稔

第2話「闘いの時来たり!技は赤心少林拳」
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