走れクルーザー!Xライダー!!(『仮面ライダーX』第2話)

あらすじ

ネプチューンを打ち破り、父の仇討ちを果たした敬介。しかし、父との死別、改造人間となってしまった身体、涼子の裏切り。敬介の心は千々に乱れていた。

心の乱れを振り払うかのように、バイクでひたすら疾走する敬介。そこで彼は、凶暴化した団地の住人達が一人の女を追い回している現場に遭遇する。追い回されているその女は、他ならぬ涼子だった。住人達には目もくれず涼子を追いかける敬介。しかし、涼子は詰め寄る敬介をあざ笑い、拳銃を発砲して立ち去る。

困惑する敬介の元に、再び霧子が現れた。

「あなたはもう普通の人間ではないのです。お父さんが死んだことを悲しんだり、恋人を追いかけている余裕は無いはずです。Xライダー、市民を守るのが、あなたの使命なのですよ?」

涼子に気を取られて、暴徒と化した人々に目もくれなかった敬介を窘め、霧子は去って行った。

敬介が暴徒と化して殺し合いを始めていた住人達の間に割りこむと、人々はたちまち正気を取り戻した。住人達は、笛の音を聞いたのをきっかけに意識を無くしたという。住人は、フルートを吹く少年・ススムに疑いの目を向ける。ススムは父親を亡くし、その形見であるフルートを奏でることで、悲しみを紛らわせていた。

敬介はススムと語らう。自分もまた、父親を亡くしたばかりであることを明かし、お互い元気を出そうと勇気づける。

住民の凶暴化させた笛の音の正体は、GOD総司令の意を受け「一億総殺人鬼計画」を実行する怪人・パニックの仕業だった。パニックは再び笛を奏で、住民達を凶暴化させる。敬介は団地の屋上にパニックの姿を確認し、Xライダーにセットアップして挑みかかったが、パニックは戦いもそこそこに逃走する。

正気に戻った住人達は、今度こそススムの仕業と決めつけ、逃げるススムを捕まえようと集団で追い回した。敬介が慌てて割って入るも、住人達は全く聞く耳を持たず、むしろ敬介もグルだと決めつけ襲いかかった。振りかざされた包丁をとっさに素手で受け止め、ねじ曲げてしまう。

「人間じゃない!!」

敬介に恐れおののきちりぢりに逃げる人々。自分自身の力に困惑する敬介に、ススムが追い打ちをかけた。

「そんなことできるのはロボットしかいない!」

ロボットに父親がいるはずがない、と敬介を嘘つきと糾弾するススム。

打ちひしがれた敬介は神ステーションの父に問う。自分は、人間では無いのか? 啓太郎は、そんな弱い敬介の心を喝破する。

「お前はもう人間では無い。人間では無いことに誇りを持て!」
「お前以外にGODと戦える者がどこにいる、お前しかいないんだ。Xライダー、人間でない苦しさに耐え、それを誇れる男になれ」

敬介に喝を入れた後、啓太郎は敬介が自分に依存するような弱い男になって欲しくないと、神ステーションを自爆させた。

爆発する神ステーションを見ながら敬介は誓う。

「ありがとうオヤジ。きっと…きっと言われたとおりのXライダーになってみせるぜ。見ていてくれ」

自分の存在意義を取り戻した敬介は、ススムを集団で捕らえてリンチにかけようとしていた住人達の前に再び割って入る。そして、パニックが化けていた八百屋の正体を暴いた。

パニックはススムを人質に取りながらXライダーと戦うも、Xライダーがパニックをクルーザーで轢き殺した。

ススムのフルートは、追いかける住民達が踏みつけて無残に折れ曲がってしまっていた。敬介は曲がってしまったフルートを人間離れした腕力で元に戻し、笑ってススムに手渡す。

「人間じゃないってことも、いいものさ」

解説

今回の怪人・パニック。

初期GODの怪人は神話をモチーフにしていますが、果て、「パニック」って神話なのか? パニックって英語の「Panic」のことだよな? と疑問に思うかもしれません。私も初見の時は首をかしげました。

調べると、どうもギリシャ神話に登場する「牧神パン」が元々の由来らしいです。彼が雄叫びを上げると、聞いた者が混乱状態に陥るとのこと。で、このパンが巻き起こす混乱状態が英語の「Panic」の語源なんですね。ちなみにパンは笛も奏でるそうですが、こちらは特に混乱効果は無いのだとか。

今回のエピソードは真剣に考えながら見ると色々怖いです。

集団ヒステリー状態に陥って、正気の状態で子供をリンチにかけようとする大人達。パニックがGOD総司令につぶやいていた「もう笛を使わずとも、あの者達は殺人を犯してくれるでしょう」という言葉は背筋に氷が走る。集団心理の怖さと、その人間の持つ暗黒面を的確にえぐってくるGODは怖い、マジで怖い。

そして第2話にして早くも自爆して消失する神ステーション。これは番組開始前から決まっていたという路線変更のあおりなのか、それとも最初から早々に退場する予定だったのかは、色々資料を漁ってみても判然としませんね。今までのシリーズにはない斬新な要素だったので、もったいない気がしますが。

それにしても、曲がったフルートを力任せに元に戻したって、普通は元に戻りゃしませんよ敬介さん…

脚本:長坂秀佳
監督:折田至

第1話「X.X.Xライダー誕生!!」第3話「暗殺毒ぐも作戦!!」
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