あらすじ
13人の科学者が次々と変死を遂げた。裏でGODの暗躍を確信した敬介は、チコ・マコが避暑に訪問している野中博士宅が次の標的と睨んで急行。そして読み通り、悪人軍団・クモナポレオンと遭遇した。しかし、野中博士は米国出張で不在。クモナポレオンは野中夫人からRS装置の設計図を奪い、その場から退いた。
後を追いかける敬介だが、クモナポレオンのクモの糸に絡め取られて、エネルギーを吸い取られてしまう。Xキックも通用せず、やがてエネルギーを失ったXライダーは気絶。剣を手に、トドメを刺そうとするクモナポレオンだったが、そこにもう一人の仮面ライダー、V3が出現した。V3はクモナポレオンを挑発だけして相手せず、その間にダウンしたXライダーを回収して撤退した。
敬介をCOLへ連れ帰ったV3こと風見志郎。しかし、全エネルギーを奪われた敬介は意識を失ったまま。志郎は瀕死の敬介を救うため、マーキュリーパワーを生み出すというマーキュリー回路の移植手術を決意する。
一方、奪った設計図を持ち帰ったクモナポレオンだったが、キングダークに偽物だと喝破される。本物を野中の息子が持っているということに気づいたクモナポレオンはすぐさま息子を誘拐する。移植手術中で身動きが取れない志郎と敬介に代わり藤兵衛がクモナポレオンを追うも、力及ばず捕らわれてしまう。
マーキュリー回路の移植手術はほぼほぼ終わり、あとは電気ショックで意識を回復させるだけというところまで来ていたが、装置はトラブルにより爆発。敬介の意識回復に失敗した志郎は、GODのアジトへ単身乗り込むが、クモナポレオンの蜘蛛の巣に絡め取られてしまう。
身動きが取れないV3をあざ笑いながらトドメを刺そうとするクモナポレオンの前に、意識を回復した敬介が姿を現した。マーキュリー回路を発動し、新たなる変身ポーズでXライダーに変身した敬介。新しくマーキュリーパワーの恩恵を得たXライダーにはクモナポレオンの吸血グモも蜘蛛の巣攻撃もまるで通用しない。そして、新たなる必殺技「真空地獄車」が炸裂し、Xライダーが完全処理した。
4枚目の設計図が敬介の手に渡り、これで設計図は敬介4枚、GOD1枚。設計図をめぐる両者の攻防はなおも続く。
解説
大小取り混ぜて実にツッコミどころの多い回ですね…ひとつひとつ見ていきましょうか。
ナポレオンって悪人か?
まずはこれでしょう。ナポレオンの功績には評価が分かれるところではありますが、あの当時は欧州全体に革命の嵐が吹き荒れる不安定な時代であり、彼がヨーロッパの大部分を征服し、その結果として多くの命が戦争で失われたという事実をもって、彼を悪人と断じているのならば、それはいささか乱暴でしょう。
と、そんな小難しい政治論を振りかざさなくても、どちらかというと日本においてはナポレオンを「フランスの英雄」として認知している人が大部分だと思います。ナポレオンがGOD悪人軍団に名を連ねていることに違和感を持った人は多かったのでは無いでしょうか。
フランス人に喧嘩売ってるのか
そのクモナポレオン、自分のことを「紳士」だの「ジェントルマン」だと自称してますが、お前はイギリス人ですか?
イギリスとフランス両国の国民には歴史的に複雑な感情があるようですが、フランスの英雄とされるナポレオンに、イギリス人の振る舞いをさせるとか、フランス人に喧嘩売ってるとしか思えません。イギリス人だって怒るかもね。
なぜ敬介は野中博士宅に来たのか
あらすじでは微妙にボカしましたが、そもそも敬介が野中博士宅に現れた経緯も全くもって意味不明です。
敬介は、チコとマコがそこを訪れていると藤兵衛に聞いて、と言ってましたが、チコとマコがGODに狙われているという情報があるわけでも無く、野中博士とGODを結びつけるような何かがあったわけでもない。
もしかすると、野中博士が設計図を受け取っているという情報を掴んでいたのかも知れませんが、それは劇中では一切説明されていません。
唐突に飛び出す「マーキュリーパワー」なるもの
敬介にマーキュリーパワーを生み出すマーキュリー回路を移植して、Xライダーがパワーアップを果たすというのが今回の肝なわけなのですが、何の説明も無く唐突に志郎が「マーキュリーパワーしか無い!」とか言い出すので戸惑います。
一応、ナレーションがマーキュリーパワーについて説明してくれますが、「新必殺技・真空地獄車を生み出す新たなパワー」と、ますます謎が深まるような雑な説明しかしてくれない。
おあつらえ向きにマーキュリー回路をセットする空間が空いている敬介の身体
志郎がマーキュリー回路をセットするべく敬介の胸にメスを入れて切開すると、そこには丁度マーキュリー回路が収まるくらいの空間がおあつらえ向きに空いている。最初からマーキュリー回路を後からはめ込むことを想定して敬介を改造していたんですかねぇ、お父上の啓太郎博士は。
だっせぇ真空地獄車
マーキュリー回路をはめ込んで使えるようになった新必殺技・真空地獄車なんですが、これが途轍もなく絵面がダサいというかシュール。正直今見ても失笑を禁じ得ないレベル。これ、本当にカッコイイと思って撮ってたんですかね…
真空地獄車とは何か、ナレーションもご丁寧に説明してくれているのですが、「真空地獄車とは、相手の力を利用した必殺技である。大地を高速回転しながら敵の頭を大地にたたきつけ戦闘力を失わせ、さらに空中に放り投げ急降下に移り、地上に激突させ、最後にXキックで勝負を決する必殺技である!」
長ぇよ!!
一番シュールなのは地獄車で地面を回転するシーン。高速回転とはいいますが、正直遅いです。このモサっとした回転が生み出す間延び感が、真空地獄車をシュールに見せている最大の要因だと思うのですが…せめてフィルムを早回しして高速回転に見せるとか、もう少し工夫があってもよかったんではと思います。
昭和仮面ライダーの中で、もっともカッコ悪い必殺技を挙げろと言われたら、自分の中ではぶっちぎりでトップ独走です。
閑話休題
さて、マーキュリーパワーを得て変身ポーズも一新されたXライダーですが、この先はライドルを使うことはほとんど無くなり、パンチとキックを中心としたこれまでのライダーとあまり代わらないアクションとなり、本番組の独特な要素がひとつ無くなってしまいましたね。個人的にはライドルを使った武器アクションは見栄えがして好きなんですが、当時は不評だったんでしょうか。
あ、あと最後に一つだけ。最後にXライダーがクモナポレオンと闘っている最中に、アキレスとサラマンドラがほとんどカメオ出演的に画面に現れてV3と闘っていたのを付け加えておきます。倒されるシーンすら省かれてるし、ほとんどエキストラ扱いですが…
脚本:村田庄三
監督:内田一作