キバ男爵最後の変身(『仮面ライダーV3』第35話)

あらすじ

少年ライダー隊本部に「デストロンの秘密作戦を知って追われている」との通報がもたらされる。直ちに保護しようと動いた藤兵衛達だったが、通報者はキバ一族の吸血マンモスによって口を封じられてしまった。通報者が使ったとみられる電話ボックスにロッカーのカギが落ちていたのを見つけた志郎は、取返しにきた吸血マンモスの襲撃を逃れ、離脱する。

ロッカーの中にあったものは、日本の政治経済文化を代表する大物とされる三人、宮本経済長官、中田科学局長、山本総監の三名だった。デストロンの秘密作戦とは、これらの三人を誘拐して改造人間に仕立ててデストロンの操り人形とし、日本を裏から支配する「日本頭脳改造作戦」であった。

志郎サイドに作戦が露見したことで、吸血マンモスは直ちに作戦を決行。自らは宮本経済長官の誘拐の陣頭指揮に立ち、V3の妨害により失敗するが、V3を引きつけている間に他の二人の拉致には無事成功した。

志郎はキバ男爵が再び宮本を狙ってくるとにらみ、自らが宮本に変装して吸血マンモスの手に落ちる。しかし、志郎の策はキバ男爵に見抜かれており、本物の宮本長官は既にキバ男爵が確保済みであった。志郎を牢獄に閉じ込めている間に三人の改造手術を行おうとするキバ男爵だったが、変身して牢獄を脱出したV3によって妨害された。

キバ一族唯一の生き残りとして、V3に復讐の炎を燃やすキバ男爵は、吸血マンモスとしての正体を表し、V3に最後の決戦を挑むが、V3回転三段キックを食らって返り討ちに遭う。ここにキバ一族は完全に全滅した。

しかし、安堵するV3にデストロン首領の声が告げる。新たなる恐怖の一団、「ツバサ軍団」の襲来を。

解説

佐久間ケンが久々に登場しますが、相変わらず扱いが酷すぎる…

志郎を嬲る吸血マンモスを背後から襲撃するまでは良かったのですが、志郎にロッカーの鍵を託されて離脱中に戦闘員に襲われる。ここで滝和也なら独力で戦闘員をなんとかいなしながらその場を離脱するのでしょうがケンにはそこまでの実力は無く、あっさり戦闘員にボコられて志郎に助けを求める有様。しかも志郎がケンに預けた鍵は偽物だったということがV3の口から暴露されます。まったく信頼されてないじゃん…。その後、二人でロッカーの扉を開けて写真を取り出したところで今回のケンのおつとめは終了。ほんと、何のために投入されたんだろ、この人物。

今回、キバ男爵はなかなか巧みな誘導策で、ターゲット三人のうち、二人の誘拐にまんまと成功します。二人の改造手術を先攻して行おうとしたキバ男爵に首領が「デストロンは常に完全を要求する」と余計な茶々を入れます。行き過ぎた完璧主義は失敗フラグが立つだけですね。臨機応変に立ち回らないと。ただ、キバ男爵もキバ男爵で、別途本物の宮本長官を確保していたにもかかわらず、わざわざ志郎の変装策にかかったフリをして志郎をアジトに連れ込んで余計なフラグを立ててますね。志郎を閉じ込めた牢獄も、志郎がV3に変身した途端にアッサリと脱出されてしまう有様で、わざわざ志郎を招き入れたくせにV3対策を何も用意してなかったことが見て取れます。

で、キバ一族最後の刺客・吸血マンモスですが、「吸血」要素があったのは、冒頭の通報者を殺害するシーンだけですね。その吸った血で何かをするわけでも無く、あとはひたすらパワーファイトでした。最後はしばらくキバ男爵の姿でV3と闘ってから吸血マンモスになりますが、やはりキバ男爵役の郷鍈治は普通の俳優さんで、アクションができるというわけではないので、V3と闘うシーンではキバ男爵の背中側から撮影したり、キバ男爵の顔とV3が同時に写らないように編集を駆使したりと、殺陣師がキバ男爵の衣装を着ているのを巧みに隠していますね。

そしてキバ男爵率いるキバ一族は僅か5話で全滅し、ツバサ大僧正率いるツバサ軍団へと引き継がれます。ツバサ軍団も同じくらいの期間で次のヨロイ一族に取って代わるのですが、この短期間での相次ぐ大幹部交代は、当時の幼児向け雑誌に話題を提供し続ける意味合いがあったとかなんとか。

前作「仮面ライダー」が全98話で登場した大幹部は4人でした。今作はその半分ほどの52話で同じく4人の大幹部ですからね。いかにハイペースで大幹部の交代が行われたかがわかろうというものです。

脚本:伊上勝
監督:内田一作

第34話「危機一髪!キバ男爵対三人ライダー!!」第36話「空の魔人ツバサ軍団」
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