小さな友情(『仮面ライダーV3』第50話)

あらすじ

デストロンはさらなる改造人間製造計画のために子供の血を大量に集めようとしていた。そのため、カメレオンに強化手術を施して吸血カメレオンと進化させ、その能力で子供達を次々と吸血鬼化させていった。

とある孤児院の園児であるケンイチ少年は、そんな吸血カメレオンが公園の子供達を吸血鬼化する現場を陰で目的してしまう。しかし、園の職員も、他の園児達も誰も「怪人」の存在を信じず、ケンイチは嘘つき少年として園で孤立してしまった。傷心のケンイチが奏でるハーモニカを、たまたま通りがかった志郎が聴く。それは彼にとっても、かつて生きていた頃の妹にせがまれてよく演奏していた想い出の曲だった。ハーモニカを通じて小さな友情をかわし合う志郎とケンイチ。

しかし、そんなケンイチにもデストロンの手が伸びた。港で一人ハーモニカを奏でていたケンイチをデストロン戦闘員が拉致。たまたま通りかかった志郎と結城がなんとかケンイチの身柄は取り返したが、作戦が志郎に露呈することを恐れたヨロイ元帥は、ケンイチの孤児院の襲撃を決行。

吸血カメレオンは子供達を人質に、職員を使って志郎を孤児院へと誘き出し、吸血鬼化した子供達を前面に押し出し志郎を追い詰めていくが、そこにケンイチから本部への通報を受けてかけつけたライダーマンが加勢。V3に変身して吸血カメレオンと相対する志郎。保護色能力と長い舌による攻撃でV3を翻弄する吸血カメレオンだったが、伸ばした舌を引きちぎられて悶絶するところにV3回転フルキックを食らい、絶命した。

解説

前回の長石多可男に続き、今回の脚本担当・平山公夫も本職は監督の人ですね。当時はまだ助監督なのも一緒。前作『仮面ライダー』でも第61話で山田稔監督と連名で脚本を担当してますね。

で、今回の吸血カメレオン。前回のカメレオンを強化改造したという設定で再登板になるわけですが、ストーリー的に前回との関連がほとんど無いので、多分新しい怪人の着ぐるみを用意する余裕がなかっただけではないかと想像しています。時期的に、『仮面ライダーX』への移行期でもあったはずですし、現場は混乱していたのかも知れません。容姿的にも特に前回と大きく変わったところは無いですし。ただ、舌を伸ばして攻撃するという新しい攻撃手段が追加されています。舌を伸ばして攻撃する怪人は大抵その舌を引きちぎられて悶絶するという、ある種のお約束がありますが、吸血カメレオンも、しっかりそれを踏襲してます。

折角志郎がケンイチに、いざという時のSOS用にV3メダルを持たせていたのに、志郎は園の職員によって園に呼び出されており、肝心のケンイチのSOSではライダーマンが支援要員的に表れるだけだったというのは、ちょっとシナリオがチグハグだったと思いますね。素直にケンイチがSOSで志郎ないしV3を呼ぶ、という展開の方がすんなり受け容れやすいような。

途中、志郎の回想シーンで妹の雪子が登場しています。念のため、第1話に登場した雪子を確認してみましたが、さすがに同じ演者でした。いや、昭和ライダーの制作現場って、良くも悪くもアバウトなところがあるので、ながらく登場していないのをいいことに、第1話とはまったく違う妹をしれっと登場させていたとしても不思議はないなと思ってたのですが、さすがにそこまでアバウトでは無かったらしい。

脚本:平山公夫
監督:内田一作

第49話「銃声一発!風見志郎倒る!!」第51話「ライダー4号は君だ!!」
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