出たぞ!恐怖のゼロ大帝!!(『仮面ライダーアマゾン』第15話)

あらすじ

子供達が遊ぶ公園に現れた黒装束の一団が、子供達を拉致する現場を目撃した男。彼は、警察に通報しようとしているところをハチ獣人に襲われ、液体状に溶けて絶命した。ハチ獣人の使命は、秘密裏に子供達をガランダー帝国に引き入れ、ガランダーの構成員を増やすことにあった。彼らはあくまで世界征服を優先し、ギギの腕輪に固執したゲドンの十面鬼ゴルゴスとは異なる戦略をとっていた。

十面鬼が斃れた場所に現れてガガの腕輪を回収した黒いジューシャの行方を追っていたアマゾンと藤兵衛は、途中で「子供が攫われた!」という母親の訴えで、黒いジューシャが運転する不審車両を発見、アマゾンがジャングラーで追いすがり、黒ジューシャを問い詰めていたところにハチ獣人が乱入した。ハチ獣人の戦闘力は高く、子供を助けるどころか自分の身すら危うい状態になっていたアマゾンだったが、モグラ獣人の機転で危機を逃れた。モグラ獣人に黒いジューシャ達の正体を問うアマゾンだったが、話の流れで彼らの正体に気づいたモグラ獣人は極度に恐れおののき、アマゾンへの説明をも拒絶する有様。

一方で、そのモグラ獣人からアマゾンが子供達を攫った一団を追っていることを聞いたまさひこは、アマゾンの役に立とうと、単身捜索を開始するも、ハチ獣人の手下とかしていた友人に騙され、自身もハチ獣人の手下となってしまう。アマゾンはまさひこが既に取り込まれていることを察しながらも、彼の案内でハチ獣人のアジトに到着。念のためまさひこを拘束してから中に踏み込むと、手下と化した子供達とハチ獣人に取り囲まれる。

アマゾンは変身して迎え撃ち、激闘の末大切断でハチ獣人を切り裂き、これを仕留めた。ハチ獣人の亡骸を見下ろすアマゾンに、謎の声が語りかける「いくら貴様がガランダー帝国に歯向かっても、無駄なことだ!」

手下化された子供達は、ハチ獣人が持っていた解毒液で全員正気に戻った。新たな敵の出現に気を引き締めつつ、アマゾンはまさひこと共に日常へと戻っていくのだった。

解説

オープニングクレジットでは「毒バチ獣人」と表記されていましたが、劇中では一貫して「ハチ獣人」と呼ばれていたので、本分でも「ハチ獣人」の表記を採用しています。

さて、今回からいよいよ本格的に登場となるガランダー帝国。このガランダー帝国は組織の成り立ちがどうにも不透明で、歴代の悪の組織の中でも、キングダーク時代のGODと並んで最も全容の理解が難しい組織だと個人的に思ってます。

公式設定では「パルチア王朝の流れを汲む」とされています。これは、古代のイラン地域に実在した国家と同名なのですが、公式設定がそのパルチア朝のことを指しているのかはわかりません。パルチア朝とのつながりを暗示するような何かが劇中に出るわけではないですし、そもそもそこそこの歴史マニアでもなければパルチア朝の名前すら知らないでしょうし、子供向け番組に使われるような設定とは思えません。多分実在のパルチア朝とは別個の架空の国家だと私は勝手に思ってます。

で、ガランダー「帝国」を名乗っているのですから、一応「国家」の体を取っているわけです。これは今までの歴代組織では初めてです。

一応、組織が国家として成り立つ要件というもがあり、「住民」「領地」「政府」「外交関係」の4つ持つことと言われています。ガランダーがこの中で明確に保持していると言えるのは「政府」くらいでしょう。少なくとも彼らが拠点を築いている日本国内には「住民」も「領地」も持ちようがありません。後に、地上のいずこかにある「ガランダー帝国」から物資が運ばれるという描写があり、もしかするとそこに「住民」「領地」があるのかもしれませんが、どちらかというと領地というより拠点のようなイメージじゃないかと思いますね。「外交関係」が存在するとも思えませんし。

ちなみに昭和シリーズで他に「国家」を名乗る敵組織は、『スーパー1』のドグマ王国、『BLACK RX』のクライシス帝国がありますが、まともに「国家」と認めうるのはクライシス帝国だけだと思います。クライシスは「50億」の住民を、「怪魔界」と呼ばれる領土に抱えており、さらには日本政府と交渉した実績もあるので、国家の4要件をほぼ完全に満たしていると言えます。

さて、そのガランダー帝国を率いる「ゼロ大帝」。この人物も謎が深い人物で、彼の口ぶりからは、ゲドンとは元々何らかのつながりがあり(友好的とは言えなさそうだが)、モグラ獣人の様子から、ゲドンの十面鬼よりも格上に位置付けられる存在であることがうかがわれます。最後の最後で、ゼロ大帝は裏でゲドンも動かしていたことが明らかにはなるのですが。

ゼロ大帝はゲドンの失敗の原因を、「ギギの腕輪に固執し、本来の目的である世界征服を見失っていた」と断じ、自らはアマゾンが持つギギの腕輪にこだわらず、結果として世界征服を成し遂げれば問題ないという戦略をとります。そういう意味ではゲドンよりも従来の悪の組織に近く、オカルト色を薄め、極端な怪奇路線から脱却して従来の路線へと近づける一環ということなのかもしれません。

そのゼロ大帝を演じるのは中田博久。昭和特撮を語る上では外すことのできない名優です。1967年の「キャプテンウルトラ」の主演に始まり、本作のゼロ大帝、そして管理人の世代にとっては『超電子バイオマン』のメイスン役も印象深いことでしょう。特撮以外でも、主に悪役として大活躍されてますね。

脚本:伊上勝
監督:内田一作

第14話「十面鬼死す!そして新しい敵?!」第16話「ガランダーの東京火の海作戦!!」

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