改造人間 大空を翔ぶ(『仮面ライダー[新]』第1話)

あらすじ

筑波洋は、大学の仲間達と共にハンググライダーの練習中に、車両が暴走族に絡まれている現場を発見する。車から引きずり出される初老の男性を助けるべく割り込んだ洋だったが、暴走族の面々は黒い装束に身を包んだ不気味な一団だった。上手く崖に隠れて一団をやり過ごした洋に、男性は「何も知らない方が君の身のためだ」と、多くを語らず洋の前を立ち去った。

しかし、洋が仲間達の元に戻ると、仲間達は全員生き埋めにされ殺されていた。なんとか全員の遺体を掘り起こし、悲しみに沈む洋だったが、彼の見ている目の前で、遺体は忽然と消滅してしまった。

物陰からその様子を覗いている女を見付け、問い詰める洋。女は、洋が助けた男性・志度博士の助手と名乗った。彼女の手引きで、志度博士と再会した洋は、そこで「ネオショッカー」なる影の組織の存在を聞かされる。しかし、志度博士は洋が目を離した隙に、ネオショッカーの怪人ガメレオジン率いる一団に拉致される。バイクで一団を追跡した洋だったが、ガメレオジンの攻撃を受け転倒、そのまま意識を失った。

瀕死の洋を死なせたくないと、志度博士は洋の改造手術を懇願。ネオショッカーの大幹部、ゼネラルモンスターの許可を経て、博士は洋の改造手術を完了。手術室で目が覚めた洋が外へ出ると、博士を連れたガメレオジンと戦闘員の一団に襲われた。戦闘員ともみ合う中で偶然に変身モーションを実行した洋は、改造人間としての姿に変化した。水面に映る自分の姿に戸惑う洋。

変身後もネオショッカーへの抵抗をやめない洋に、ゼネラルモンスターは改造手術は失敗と判断。ガメレオジンに洋の抹殺を命じる。洋は新たに得た改造人間としての力でガメレオジンと互角以上に戦い、最後は大ジャンプからの急降下キック「スカイキック」をガメレオジンに浴びせ、トドメを刺した。

元の姿で甦らせることができなかったことを洋に詫びる志度博士に、洋は言う「ネオショッカーの悪を知った今、それと戦う力を与えてくれたことに感謝しています!」。新たに得た力で、大空を滑空するその姿に、志度博士は力強く言った。

「筑波君…君こそ…君こそ仮面ライダーだ!」

解説

というわけで、『仮面ライダー[新]』第1話です。ライダーの誕生経緯が非常に濃密に描かれており、個人的には昭和シリーズのなかで一番好きな第1話だったりします。

色々語るべきところがあるので、個別に触れていきましょう。

主演・村上弘明

平成・令和の現在でこそ、『仮面ライダー』シリーズは若手俳優への登竜門とされ、これに出演後、華々しく活躍する俳優が多いのですが、昭和の時代は必ずしもそうではありませんでした。

むしろ当時は、ヒーローものに出演するとそのイメージが強く固着してしまい、役の幅が広がらないもどかしさに悩む俳優が多く、出演歴を伏せようとする俳優も多かったようです。本作で筑波洋を演じた村上弘明もそんな一人ですが、彼は後に現代劇・時代劇問わず幅広く活躍するに至ります。昭和ライダーの主演俳優では、国内では最も華々しく活躍した俳優と言えるかもしれません。そんな彼も年月を経て、本番組への出演歴が自分の原点であると認識し、今では誇りに思うように変わったと語っています。

なお彼は、出演当時は両親に俳優業をやっていたことを隠しており、本番組に出演したことで親バレしてしまったというエピソードがあります。

田畑孝

本作で第1話から登場する志度博士こと志度敬太郎は、前作までの立花藤兵衛の立ち位置に収まる配役です。洋を改造した本人でありながら、なおかつ洋の戦いをサポートする志度博士を演じているのは、田畑孝。

プロデューサーの平山享は今回も立花藤兵衛役で小林昭二を起用する気満々だったものの、藤兵衛を卒業したいという小林に固辞され、代わりに新たなサポート役を置いたわけなのですが、残念ながら田畑は本作の放映期間中に体調を崩して降板、番組の最終回を待つことなく急逝しています。志度敬太郎は第14話で突然姿を消し、塚本信夫演じる谷源次郎に交代するのですが、そこにはそういう経緯があったのです。

やはりベテランなだけあり、当時まだキャリアの浅かった村上弘明と比べると、演技の安定感が段違いですね。

ネオショッカーという組織

で、今回ライダーの敵となる組織はその名も「ネオショッカー」。いかにも、かのショッカー軍団の系譜を受け継いでいるかのような名前の組織ですが、劇中でとくにショッカー軍団とのつながりを匂わせるようなエピソードはありません。強いて挙げれば首領の声が同じだって事くらいですか(笑)。

そもそも、世界を支配下に置くことを企むショッカー軍団と、ネオショッカーの目的は一見同じようでも微妙に違ったりします。そのあたりは、また別途語ることとしますが、組織の名前は似ていても、ショッカーとの関連はとくに無いと見るのが妥当かと思います。

ただ、制作イメージとしてはやはりショッカーを念頭において作られているようで、第1話から登場する大幹部・ゼネラルモンスターも、露骨にゾル大佐を意識したキャラクターですね。

脚本:伊上勝
解説:山田稔

第2話「怪奇!クモンジン」
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